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土方が剣の稽古をしていたら、とたとたと頼りなげな足音を立てて沖田がやってきた。寒いだろうに、寝起きなのか薄い小袖一枚に裸足に下駄で。白い息を散らせながらいつもはピンク色の頬を赤くさせて。そして土方の目の前まで来たかと思ったら何も言わずしゃがみ込んだ。はぁはぁと吐く息が真っ白で 寒さからだろう、赤くなった指先が痛々しい。 「どうした?総悟」 剣の稽古を少し中断させて、聞いてやっても沖田はしゃべらない。ただ土方をじ、と見据えている。 「……さみぃだろ、家ん中入ってろ」 「……」 気遣うように言ってやっても沖田は答えない。時々不可解な事をするこの子供に、土方はいつも悩まされていた。今日もか、と、少しあてつけるように大袈裟に溜息を吐く。そして沖田を無視しまた剣の稽古を始めだした。沖田の余りにも熱いその視線にやりにくいなと思ったのは一瞬で。その後はまた集中し剣の稽古を続けた。沖田の唇がみるみる尖っていっているのも知らずに。 「土方のばかやろー」 ぼそりと呟くように沖田が言った。けれど土方の耳に聞こえるように言ったそれは沖田の思惑通りちゃんと土方の耳まで届いていて。 「アァ?」 土方は剣を振るのをやめ沖田をジロリと睨む。すると二つの大きくどこかきらきらとしている沖田の瞳がじ、と自分を睨んでいるのに気付いた。恐くなんて勿論ないが、なにか迫力のあるソノ瞳に土方は眉間に皺を寄せる。 「…ンだ、総悟。言いたい事があるならハッキリ言え」 「別に…なにもないでさァ。ただ土方がばかだとおもったからばかだって言っただけですぜィ」 「お前次に俺の事呼び捨てで呼んだらケツ引ん剥いて引っ叩くぞ」 脅すように言ってやると沖田はますます唇を尖らした。そして一度強く土方を睨んだあとぷい、とそっぽを向き俯いた。それから、暫くどちらも口を開かず少しの間沈黙が続く。 「……」 「……」 ふいに、急に。沖田の瞳にじわりと涙が溜まってきた。土方は訝しげに沖田を見つつおい総悟、と声を掛ける。乱暴な言い方だった。言ってから、土方は後悔した。ポロと瞳に溜まっていた涙が落ちたのだ。げ、と、土方は内心冷や汗をかく。涙は、苦手だった。ガキの涙は特に。その中でも沖田はわんわん泣き叫ばずぐすぐすと静かに長時間泣くものだから手に負えない。 「総悟ちゃーん…泣くなって、…どうしたんだよ、オイ」 「……ひくっ…」 唇を噛んで一生懸命嗚咽を我慢する沖田に内心頑固者、と、溜息を吐きながら。沖田と同じ身長くらいになるようしゃがみ込み目線を合わせながらあやすように聞く。子供をあやすのなんて苦手だったが随分、慣れたと思う。少し前まで泣くガキが居たらぶん殴ってやめさせていた自分が不思議なくらいに今目の前で泣いている沖田に自分は甘い。 「総悟…ん?どうしたんだ?言ってみろよ」 「……すんっ…」 頬を持ち顔を優しく上げさせる。少しいや、と抵抗したが有無を言わせずぐい、と上げた。涙が伝う頬をくい、と親指で押さえ涙を拭き取る。 ひっく、すんっ、ぐす、えっく、ずっ、うぇっ、ふぇえっ。 そんな嗚咽がいくつ沖田の口から漏れただろうか。辛抱強く待っているとぐすぐす泣きながら、沖田が言った。 「だってひじかたさんっ、ウッ、さいきんかまってくれない…っエッく、ウ…」 「…………!」 溢れ出た言葉は余りに可愛いもので。思わず土方は目を見開いた。 いつもは手の付けようがないくらい頑固で可愛くなくてヒネクレ者の癖に、時々妙に可愛い事を言うのでこの子と一緒に居るのはやめられない。言ってからまたふえ、と泣き出す沖田をそうか、と言って優しく抱きしめながら、土方はふと考えた。 確かに、ここ数週間。新しい技の会得に夢中になって沖田に構っていなかった、と 思う。唯一顔を合わす夕飯の時にも沖田が素っ気無い態度だったのはそのせいか、と納得した。そして苦笑ともとれる柔らかな笑みを浮かべると沖田の頬に次から次へと溢れる涙をベロと舐めた。驚いてぱちぱちと瞬きを繰り返す沖田に微笑うと言う。 「お前は、可愛いなぁ総悟…」 しみじみ、と言った感じで思わず出た言葉に自分でも一瞬年寄り臭いと思いながら。見上げた沖田の可愛らしい顔にそんな事どうでもよくなってしまう。ぱちりとした大きな瞳が潤んでいるのが可愛らしい。少し躊躇いながらおずおずと自分に抱きつき沖田がボソリと言った。 「ひじかたさん、…好き」 ぎゅうと沖田の土方を抱きしめる腕に力が篭る。 「ずっと一緒にいてくれないと、いや…」 ともすれば空気に消えてしまいそうな小さな声で、沖田が言った。恥ずかしいのか土方の胸に顔を埋めけれどもそれでも赤くなっている耳が覗いている沖田に土方は微笑む。そして沖田に負けず劣らずの小さな声で 言った。 「あぁ、…ずっと一緒にいよう」 遠い昔の 小さな約束 END |
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しょーもない話やのう/沖田5歳土方17歳くらいの、設定で…(史実完全無視…!) きらきらと瞬く 041114 |