沖田の気分が沈んでいると土方にはすぐに分かる。一見全くいつもと変わりないのだけれどちょっとした仕草や表情、微妙な声のトーン違い何より第六感で、分かってしまうのだ。
そういう時の沖田は何をするか分からない。いつもそうだけどより増して、土方の予想範囲外の行動をする。何もしない時が多いのだけれどそれだけにその反動か何かした時の「何か」が大きい。

沖田は気分が沈んでいるからと言ってそれを外に出すようなことは絶対にした事がなかった。だけれども今日は、違った。
いつもは1人になりたがるのにその時は妙に土方についてきていて、土方はできるだけいつも通りに接していたのだけれどもほんの少しぎこちなさが出ていたかもしれない。隣でふるふると小さく震える沖田を抱き締めてやることすらできない自分が土方はもどかしくてたまらなかった。

「土方さん、くるしい」

ポツリと沖田が言った。

「いたい、いたい」
「どうしよう」

沖田の言い方は決して土方に助けを縋るようにではなくて、寧ろ出された言葉には全く感情がこもっていなくて、顔だってあんまりにも無表情で、きっと感情の出し方を忘れてしまったのだと思ったら急に、突然に、沖田がすごくすごく不幸なのではと土方は思ってしまった。

「だきしめて」
「…」
「おねがい」

ゆっくりと、腕をあげてギュっと、力を込めて抱き締める。ひゅっと、沖田が息をのむ音が聞こえた。沖田もゆっくりと腕を土方の背にへと回す。弱い力で、だけどそう土方が思った瞬間、ギュっと恐ろしいほどの力で抱きつかれた。

「っ」
「もっと、強く…」
「…」

言われるままに土方は腕に力を込める。かなり力を入れたつもりだった。沖田の存在を確かめるように、そして沖田に自分の存在を分からせてやるために。

「だめ、もっと!」

だけど叫ぶようにそう言われて眉を寄せる。これ以上って、土方は思った。今の時点で沖田は苦しそうで、痛そうで、これ以上力を入れたら沖田の細い体が壊れてしまいそうだと土方は思う。だけどもっと、沖田にまた促されて土方はまた一際力を強めた。

「あっ、う、」
「…いてぇんだろ」
「いいんでさァ、もっと」

自慢ではないけれど土方はそんじょそこらの男より大分腕力がある。その気になったら沖田の体を壊すことだって簡単だ。これ以上は、本当に無理だ、壊れる、思うがだけど沖田が切実そうに、苦しそうに、言うものだから土方はまた力を込める。体がみしっとなった。だけどあぁ、と、沖田の口から漏れた声は少なからず嬉しさが込められていてこれで良かったのだろうと自分に言い聞かせる。

「土方さん、もっと!」

叫ぶ沖田の声は辛そうでだけど土方は分かってしまった。
沖田は心の苦しさ、痛さをうめようとして、消そうと、感じなくしようとして、自分の体を痛めつけているのだろうと。体が痛ければ心の痛みは消える、例え少しの間でも。心の痛さより体を痛めつけられる痛さの方がましなのだろう。こんな方法でしか心を潤せない正常に保てない沖田が不憫でならなくて土方は顔を顰めた。

「あ、あぁ」

そして手加減をしないくらいの勢いで沖田を抱き締める。ミシ、また体がなった。壊れるかもしれない、土方は思う。だけど、だけどそれで心の痛みが消えてくれるなら、束の間でも感じないでいられるなら、忘れられるなら、入れ物の体なんてどうなったってきっと良いんだろうと思って、土方はまた力を込めた。


END

すまん、風木のあの場面に似ているのは、クリスマスが過ぎたからだと思って
(分からない人は、分からないままでいて私がはずかしい) 

  い武器 051229