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土方が目の前で斬られたとき、沖田は心から後悔をした。 殺しておけばよかった と 知らないうちに、けれども確かにそう思っていたのに気付いて沖田は何を思っているんだと、冷静になれと、思ったのだけれど冷静に考えてみてもどうもそう思っていることは揺るがない事実ならしくて少し真面目に考えてみる。 結局土方は生きていてくれて、だけど沖田は心配で心配でしょうがなかった。これから生きていく中でもし、土方が殺されてしまったらどうしようかと。土方が殺されるという現実が、自分にとってこれほど辛いことだとは思っていなかった。実際土方が死にかけてやっと気付けた。沖田は、もし死んでいたらと思うと恐怖で身が竦む思いだった。土方が死ぬことがいやなんじゃない。土方に自分以外によって、刀にでも災害にでも病魔にでもなんにでも、自分以外の何かによって、死なれるのが、とってもとってもいやなことなのに気付いたのだ。何故かなんて知らないだけどこんなにいやなことなんてきっと他にはないってくらいに。 あぁだからなのかと、沖田は妙に納得をした。日頃のあの行動、土方の命を狙うあの行動は沖田にとってはとても自然な行動だったのだけれどあとから考えてみるとあれなんで俺土方さんに刀向けてたんだろうってどうして殺したいって思ったのだろうって不思議だった。しかし土方に刀を向けているときは、全く何の違和感もなくそれをしていた。呼吸をするかのように、心臓を動かすかのように、血液が体中をかけめぐっているかのように。沖田は土方が自分以外の他の何かの手によって死ぬことが自分にとっていやなことだなんて今の今まで気付いていなくて、だけどきっと心の奥の奥の方は知っていたのだろう、だから無意識の内に行動をしていたのだ。なんて優秀な頭脳なんだろうと沖田は自画自賛する。 そして思った。殺してしまえば、いい。もうこんな恐怖感味わいたくない。殺られる前に殺る、自分に不利益がおきる前につぶせ、そんなん沖田にとって当たり前のことで何の不都合もないはずだっただけど、なぁ、1つだけつっかえがあって沖田はどうしようかと思った。 「死んじゃったらどうしようかと、思いやした」 「…へぇ」 ふと、こういう時にりんごでも剥いてやれれば少しでも土方が自分にドキリとするのではと思いついた沖田は土方が寝ているそばに置かれているりんごを見やった。ご丁寧なことにそばには果物ナイフも置かれている。だけど器用にむくことなんて沖田にできるはずがなくてそのアイディアは思っただけで消えていく。まさか刀で剥くわけにもいかない。 病室は沖田か土方が何かしないかぎり限りなく静かで落ち着かないだけどなにをする気にも沖田はなれなくてただ空間を見つめていた。おれは、ねぇ、ぽろりと言葉が口からこぼれ出る。沖田は自分の意思からではなくでた言葉に少し驚いてだけど言った言葉を確かめるように心の中で繰り返して変な言葉じゃなかった大丈夫、思って続きを口にした。 「おれねぇ、土方さんがね、おれ以外のやつに殺されんのがすっげぇいやなの」 「そう」 「だから殺したいんでさァすごく」 「ふぅん」 「アンタが今生きてんのがすっごくいやなの、いつ誰に殺されるかわっかんねぇじゃんだから今すぐ殺したいんだけど、ねィ」 「何?」 「土方さんが隣にいないのも、同じくらいいやならしいんでさァ」 土方は、沖田が自分に刀を向ける時いつだって本気なのを知っていた。振り上げられる刀にためらいなんてなかった。隊士の前でも構わず殺そうとしてくるので土方はいつも冗談のようにあしらっていたけれど沖田が自分を本当に殺す気でいることを知っていた。 だから、その沖田の言葉が意外すぎて目をみはらせる。不意を打たれるのなんて何年ぶりだろうか。土方は、自分の意識が沖田に吸い込まれていくような錯覚を覚えた。 だって絶対とどめさす気でいるのだろうと、土方はさきほどから気を張り詰めていたのだ。そんなこと思っていたのが沖田に申し訳ないと、ものすごく思う。 「どおすればいいと思いやす?」 しおらしく頭うなだらせて手の平きちんと膝の上においてちんまりと、そこにいる沖田がむしょうに頼りなさげに思えて土方はぎゅうっとこぶしを握った。なんてわがままなんだろうって、普通なら思うだろう。殺したいっていっといて隣にいないのもいや、だなんて、わがままも大概にしておけコルァなんて、だけど土方の頭の中に浮かんだ言葉はそんなんじゃなかった。じゃあ簡単じゃないか俺は、そこで言葉を区切って土方は笑う。 「絶対死なねぇ」 あっ、と沖田は小さく、土方にわからないように本当に小さく、息をのんだ。さきほどまでどうしようどうすればいいんだろうと、奮闘を繰り返していた心の中がやわらかであたたかい何かに優しく包まれていくのを感じた。うっとりと、目を閉じながら思う。 どうして、(どうしておれってこんなにひねくれているんだろう、だって殺したいのに隣にいてほしいなんて、おかしい、どうしてこんなにひねくれている俺に土方さんは優しい言葉をくれるのだろう、もっと冷たくしたっていいのにもっと傷つけてくれたっていいのに、だってきっと土方さんがおれを殺したいなんて言ったらおれはすっごくすっごく怒る、むかつく、そして悲しくなるおれはそんな思いを土方さんにさせてんのに、どうして、おれが欲してやまなかった言葉をそんなにあっさりとくれるの?おれだったら絶対にあげない、だってむかつくんだもん、ごめん土方さん、ごめん、それから。) 「ありがとう」 END |
| 死なない、のひとことが欲しかったのですってかええええ何甘くなってんの怖っ!! あたしって基本的に甘いんですねだからナメられるんだ(誰に?!) 恋人はスナイパー 060131 |