暇だった。
それを言い訳にしよう、沖田は思いながら副長室の前まで来ていた。甘えたくってきたのなんて正直なこと言うのプライドが許さない。本当ならこの部屋にくる事自体プライドが許さないのだけれど我慢できなくなってしまったのだからしょうがない。こういう時、自分をおさえきれない子供な自分が沖田はいやになってしまう。
沖田はそっとノブへと手をやって、妙に自分が緊張しているのを自覚した。仕置きされたり無理やり仕事させられたり、この部屋にはあまり良い思い出がないからだろう。思いをふりきってガチャリとドアをあけた。ノックしないでいいのは恋人の特権だ。そろそろと部屋に入る。
暇だったんでさぁ!何の脈絡もなく唐突に言ってしまいそうになって沖田はあわてて口をふさいだ。何か声かけてきたら、言おうって思う。だけど土方は何にも言わなくて、土方の横までいって無言でじーと見つめる。視線だけで訴えてみた。

「何?」

そうするとようやく、だけどこちらなんて見もしないで土方が言った。沖田には邪魔、って言ってるように聞こえて土方を見ていた視線をついとそらす。

「別に…」

負けないように(ってこの部屋きた時点ですでに負けてるようなものだけれど)何でもないように言いながら土方さんつめてぇのって沖田はふてくされたように思った。思った後であ、しまった、別にじゃねぇよ暇だった、だよ、思ったけどもう別にどうでもいいと思う。だってこんなに冷たくされるなんて思ってもみなかった。一気にテンションが下がる。
しばらくそのままそこにいたけれど土方は相変わらずで沖田はさみしそうに眉を寄せた。出て行こうかとも思ったけれど出て行ったらきっと後悔をすることを沖田は知っていた。だってまだ目的果たしていなくてその目的はちょっとやそっとで諦められるようなことではなくて、部屋出ていったってまたすぐにここに来たくなるに決まっている。それにしたって土方はずるいと沖田は思った。土方は自分がかまってほしい時はすぐに襲ってくるくせにって、それなのに自分がちょっとさわりたいって思ったときは何もさせてくれないって。
沖田は土方から1メートルも離れていない窓際によっかかって外を眺める。だけどすぐ何も見たくなくなって瞳を閉じた。唇を噛んでいないと甘えたことを言ってしまいそうで沖田は強く噛んでいたけれどもはぁ、こらえられず溜息が出ると思った瞬間。唇は溜息が出る代わりにやわらかい感触に包まれた。

「え、っ!」

それはすぐに離されて沖田は唇をおさえる。はじかれたように顔あげて瞳を開けると土方がすぐ傍まで来ていた。だけどすぐに椅子にこしかけてまた何事もなかったかのように仕事をし始める。しかしきゅうと沖田の中のいとしさとが急上昇していってそれがプライドに見事勝った。

「ひじかたさーん!!」
「うっ、」

どすっと、勢いよく土方に後ろから抱きつく。おいこら、機嫌悪く言う声が聞こえたけれどその続きは唇ふさいで消してやった。くちとくちくっつけたまま体動かして土方の膝の上に座る。ぎゅうぎゅうくっついて何か言う気失せさせるくらいにがんばって舌つかって口の中ほってやった。ちゅぱと沖田がようやく唇はなした頃には土方の眉間によっていた皺が消えていた。それだけでやりィ、と沖田は思う。

「あーー…」

土方が頭ガシガシかいてうなった。沖田はそれをどきどきしながら見る。この後待っているのはしかられるか受け入れられるかのどっちかだ。しばらくして土方が溜息吐いた。もういいやって呟いて膝の上にちゃっかりと座ったままの沖田の腰に腕まわして少し抱きしめる。あとちょっと待ってな、そう言ってまた仕事し始めてだけど土方の傍にいることを土方に許してもらえるだけで邪魔にされないだけで満足な沖田は(きっとそれを土方も分かっている)うん、元気にこたえて土方の髪に顔をうずめた。


END

 

  ぇ 060203