沖田はただいまも言わずこっそりと、屯所の玄関をあけた。腕の中のぬくもりを確かめるように少し抱きしめる力を強めるとそろりそろりと得意の抜き足で廊下を歩く。自分の部屋までなんとか誰にも見つからず行かなければならない。みんな土方の回し者だから、見られたら土方にチクられるに決まっている。難問は、自分の部屋の隣にある土方の部屋だ。あそこを通らなければ自分の部屋まで行けれない。抜き足により磨きをかけて土方の部屋の前を歩く。よし、いける!!気を抜いた瞬間、ばんっ、と、ドアが開いた。

「あ…」

沖田の口から間の抜けた声が出る。土方は沖田がいることが分かっていたのだろう、驚きもせず少しの間沖田を見下ろして、それから沖田がしっかりと抱き込んでいるもの、猫、の頭を少し撫でた。長い指は器用に動いてい猫は気持ち良さそうに表情をゆるませる。だけれど沖田は首もぎとる気なのではと思って少し身を引いた。

「総悟…、お前それをどうする気なんだ?ん?」
「飼う」
「だめに決まってんだろォオが!!捨ててこい!!」
「…無理なんですァ」
「ハァ?何が無理なんだよ、いやなんだろ」
「いや、無理なんです」
「ふざけんな」

土方は猫をひっつかんだ。捨ててきてしまおうと思いぐい、とひっぱったのだがしかし猫は離れない。沖田が強く抱いているのだろうと思ったのだけれどもそれは違って、猫が沖田の服を強く掴んでいたのだ。にゃあ、と一鳴きする猫を見ながら土方はその瞳を細める。

「何こいつ…」
「ね、無理でしょう」
「…」

少しえばった風に沖田がいう。土方は無視して服に食い込んでいる爪を離そうとした。しかし大分難儀してしまってそうしている内にその指をカプと噛まれてしまう。

「いっ!!」
「ぷっ、土方さんダッセ。噛まれてらァ」

じんじんと痛む指にむかっ腹立ちながら猫を睨む。こうなったら力づくだと無言でぐいぐいと兎に角ひっぱった。にゃぁにゃあと猫が大きな声で鳴いたが土方には関係ない。しかし、沖田にひっぱっているその手をパシッと叩かれてしまった。

「ちょっとやめてくだせぇよ、服が破れるだろィ!」
「新しいの買ってやる」
「そういう問題じゃ、ねぇの」

土方の手が離れたのを良い事に沖田は猫を抱きなおしてもう土方の手に触れられないように守ってやった。そうするとにゃぁと、土方に向かって鳴いた敵意むきだしの鳴き声とは全く違う愛らしい媚たっぷりのまさしく猫なで声で猫が鳴く。沖田は珍しく頬をだらしなくゆるめさせていて自分もにゃぁなんて言って猫をあやしたりしていて(土方は可愛いなぁと不覚にも思ってしまったが)指でのどを撫でてやったりしていて土方は大変面白くなかった。

「誰が面倒みると思ってんだ?ア?てめぇが面倒見れるのなんてサボテンくらいだろうが」
「るせぇなァ…。ちゃんと自分で面倒みれますァ!土方さんにどうこう言われる筋合いねぇ」
「あっ、コラ!」

言うとタッとかけ足で沖田はその場を離れた。土方は追いかけようかとも思ったけれども廊下でおいかけっこなんて誰かに見られたら恥じだと思いそのままにしておく。一息ついたら部屋に行こうと思って土方もその場を離れた。




沖田の部屋に行ってみるとまだ猫が服にしがみついていて、流石に沖田は少し困ったように眉を寄せていた。ほれ見ろさっき俺が無理に外してやった方が有難かったろコラァ、思いながら腰を下ろす。

「まだ、離れねーの?」
「へい。…どーしたんでしょーね」
「うっとうしいな」
「…」

ちっと舌打ちしながら言う土方を沖田は無言で睨んだ。それに土方も睨み返すと沖田はふいっと横を向く。

「なんだよ」
「きっとこの子、離したら捨てられるのが分かるんでィ…。かわいそう」
「ハッ!」

猫の頭を愛おしい気に撫でながら沖田が伏せ目がちに言ったのを聞いて土方は嘲笑する。そんな訳ねぇだろと言ったら沖田はふぅと溜息を吐いた。そして呆れたとでも言うように首を横に振る。その仕草が馬鹿にされているみたいで土方は気に食わなかった。

「だめだァ、土方さんは人間性がかけてるなァ」
「…心底、お前にだけは言われたくねぇな」
「生き物かわいがれなくなったら終わりでさァ」

知ったような口をきく沖田を可愛くないと思う。だけれど言っていることはなかなかどうして当たっている。無駄に言い合う気もおきずにあぁそうですね、軽く返事を返した。それに返事をした訳ではないだろうけれど沖田が大きなあくびをする。そして眠そうに目をこしこしとこすった。

「もう寝る」
「寝るって、…そのまま抱いて寝たらつぶれるだろソイツ」
「気をつけまさァ」
「お前、自分の寝相の悪さ知らないの?」

呆れるように言って土方ははぁあ、とため息を吐いた。一度見せてやりたいほど沖田の寝相は悪い。ビデオにでも撮ってやろうかと幼いころからその寝相の悪さを見てきた土方は何度思ったか知れない。腕に抱いた猫なんて、朝起きたらぺったんこに決まっている。だけど土方の心配をよそに沖田はのうてんきだった。

「布団しいて、土方さん」
「何で俺が…」
「だって俺しけねぇもん」

はいはいお姫様、土方は仕方なく言うことを聞いてやる。だけれど押入れあけて重たい布団ひっぱりだしてきて、それを畳に下ろそうとした瞬間。

「ひゃん!」
「は!?」

沖田の甘い声が聞こえてぼすんっ、布団を落としてしまった。何やってんでィ土方ァ!さっき艶っぽい声出したわりに色気のない声で野次とばされる。え、聞き間違え?幻聴?思った土方にだけれどまたヒャ、同じような声が聞こえてきた。今度は聞き間違いなんかじゃない、ぐりん、とすぐに沖田の方へ顔を向ける。

「ン、やだっ、!」
「っ、…おま、なんて声出してんだよ」
「土方さんやらしー…、なんでもエロイ方にとらないでもらえやすー?」
「なっ、」
「コイツが首筋舐めただけでさァ」
「…」

そう言って沖田が細い指でさす先はもちろん、腕の中の猫。ペロ、と長い舌を出している。オーイこらちょっと人のモンに手ェ出すなんて良い度胸してんじゃねぇかオス?オスなのか?オスだったら容赦しねぇぞコルァ。

「ひっ、うわ、ちょ!」

凄むも猫には通じなかったのか更に猫はペロペロペロと首筋を舐め回し始めた。耳の裏の下っかわを異様にしつこく舐めてるの見てうわァ何こいつ何で総悟が感じるとこ知ってるの!?土方は思う。実際知ってるはずがなく偶然なのだろうけれど沖田は先ほど土方を馬鹿にした勢いを無くしんっ、と、時折押し殺した嬌声出してふるふる震えていた。

「ひゃっ、ちょっ、やだこの猫!」

むんず、と沖田はその猫を掴んで離そうとしたのだけれどやっぱり、離れない。しっかりと爪が服に食い込んでいて少しのことでは離れそうにない。沖田は顔を赤くして震えていた。土方はその様子をいらいらと見ていて、だけれどもあ、と、一つ猫を離す方法を思いつく。

「服、脱げばいーんじゃねーの?」
「あ…確かに」

今更の提案にしかし今まで気づかなかった沖田はすぐに猫が痛い思いをしないよう最善の注意をはかりながら掴まれているシャツを脱いだ。晒された上半身がまぶしい。だけれど猫はあれほど掴んで離さなかったシャツを何の名残もなく離しまた沖田に飛び掛ってきた。

「ふぎゃっ!!」

そしてまた、沖田のそばを離れまいと爪をたてたのだ。しかし次に爪をたてたところは衣服ではない沖田のなまみの体だ。真っ白な肌に爪が食い込んでいる。痛そうだなぁと人事なので無責任に土方は思った。

「いぃってェ!ちょ、離してひじかたさん!痛い痛いマジで痛い!」
「しょうがねぇなぁ…」

涙滲ませて縋るように言う沖田が流石に哀れでホラこっちこい、土方は猫に向かって声をかける。猫はその声に土方の方をチラっと見たけれどすぐにふい、と顔をそらした。うわぁ、なんて生意気な猫!土方はイラっときてまた無理に猫を引っ張る。

「ちょ、いてぇいてぇいてぇいてぇ!土方テメェふざけんな!!」

だけれどそうすると余計爪が肌を深く傷つけることになって沖田が叫んだ。あ、悪ィ、土方はすぐに手を離してくれたけれど沖田は唇をとんがらせる。マジむかつく!沖田が叫んだ。そしてちょっとたまァ、痛いから離れてくれィ、頭撫でくりしながら頼むように言うと意外とあっさりと猫は肌から離れてくれて膝の上におさまった。気まぐれな猫、沖田は思いながらしかしホーっと痛みから逃れられた安堵の息を吐く。

「いってェな…」

けれど収まらない痛みに眉顰めさせて呟いた。真っ白な肌からは血がたらたらと滴り落ちている。しかし土方の目にふと、ぷっくりと膨れている乳首が目に入った。それに指を這わせてみる。ひゃんっ、沖田が高い声でないた。

「…感じてんじゃん」
「うるさい!乳首触られたら感じるだろィ…」

最後は少し恥ずかしそうに瞳をそらせて語尾を小さくさせて沖田が言う。

「痛そう」
「痛いっつってんだろが」

べろん、と血が出ているところを舐めて土方がうわ、まず、ってか薄!お前鉄分足りてねぇんじゃねぇの味薄い、言うものだから誰も血液の味の感想なんて聞いてねぇよ、沖田は冷めた口調で言う。けれど土方が伸ばしている沖田の足を跨いでその上にのっかってきたものだからびっくりした。顔が近づけられて、ちゅ、とキスされる。そのまま肩押されて押し倒されそうになって沖田は焦る。

「ちょ、やだ…、土方さん?」
「ちょうど布団あるし、良いじゃねぇか」
「よくねぇよ、俺眠いっていったじゃん!!眠いの!寝たいの!」
「知らん」

拒否は冷たく一蹴されて今度こそ肩を強くおされて押し倒された。逆らえない。猫が膝にいるのなんて気にしないで土方が体くっつけてきて潰されそうになった猫が逃げるのが沖田に見えた。この人猫より性質悪ィ、沖田は思ってだけど猫は無理やり剥がすことができるけれどどれだけ痛いことされても土方にはそうすることできるはずがなくてしょうがないと、諦めた。


END

長ったらしいなァ(えー)
結局猫より土方、みたいな、ね…  

  まと一緒 060214