|
今日はいつもと逆だった。 いつもは土方に叱られたのを近藤に慰めてもらっていたのだけれど今日は、近藤に叱られたのを土方が慰めにきてくれたのだ。 えんえん部屋でうずくまって泣いているとドアが開く音が聞こえて沖田はビクッと体をはねさせた。怯えたようにドアの方を見る。ドアが開いて来たのが土方だと分かると沖田は余計に瞳に涙を溜めさせて体をちぢこませて震えた。怒りに来たと思ったのだ。 「総悟…」 だけどそう言った土方の声が優しくて沖田はびっくりする。土方のこんな優しい声初めて聞いたと思った。驚いたように瞳を大きくさせてまばたきをくり返す沖田を見ながら土方は、大分緊張しつつ部屋の中に入る。そして部屋のすみでちぢこまっていた沖田の方へと手を伸ばした。何されるのかと沖田は怯える。けれどその手のひらが優しく自分の頭を撫でてきて、それにどっと涙がこみあげてきた。安心したのと今日は誰にも慰めてもらえず1人泣くのかと思っていたから嬉しかったのとで、だ。しがみついてまたわんわんと泣いた。土方は扱いに困ったけれどもよしよしと頭を何度も優しく撫でてやる。 「こんどうさんおれのこときらいになったんだ…」 大分落ち着きを取り戻した沖田がぽたぽたとさきほどの勢いはなくしたけれどまだ涙を零しながら嗚咽混じりに言った。そんなはずないだろう、言って土方は苦笑をする。 「ちゃんと謝ったのか?」 「……」 沖田は黙ってふるふると首を横に振った。そしてまたぎゅうと土方の腰に引っ付いてくる。そうされながら土方は思い出す。珍しく大きな声で近藤は怒鳴っていた、きっと本当に怒っていたのだろうだけれど今頃は近藤も反省しているに違いない。沖田がちゃんと謝りさえすれば絶対にべたべた甘えさせるに決まっているのは土方には分かるのだけれど、沖田には分からないのだろう。何分いつも甘えてばっかいたものだから叱られたのは初めてで嫌われたと思っても仕方ないのかもしれない。 「ちゃんと謝れば許してくれるに決まってんだろ」 「だって、怒ってるもん…」 「いいからホラ、近藤さんトコ行くぞ」 「怖いからやでさぁ!」 言ったかと思うとたたたっと沖田は土方から離れてまたすみっこへと行ってしまった。思わず舌打ちをしそうになる。どうもこういう役は自分には向いていない。どうやって言えば怖いのを我慢して謝りに行く気になるのか分からない。 「…」 どんだけ頭ひねっても良い案が少しも出てきやしなくて土方はふぅと小さく溜息を吐いた。やっぱりここは俺流でとかなんとか思いながら沖田の腕をガッシリと掴む。そして引きずるように沖田を連れてって部屋を後にした。もちろん行く先は近藤の部屋。実力行使でいくわけだ。 「やだ!ちょ、やだ土方さん!離して、はなしっ、やっ!!」 近藤の部屋に向かっているのが分かったのだろう沖田は土方を蹴ったり柱にしがみついてみたり抵抗を試みたけれどもあんまりにも力の差が激しすぎて何の防御にもなりはしなかった。 「やでさァ!こわいからやだぁ!」 こんなに怖がっているのに連れて行くの可哀想だなぁとは、土方だって思う。沖田を納得させられる沖田の怖さを取り除いてあげられる巧みな話術が自分にあれば、土方は思った。今度こどもの躾け方の本でも読もう、真剣に考えている自分に気付いて脱力した。 END |
| 大人とこども 060324 |