気が付いたら部屋の中にいた。侵入を許した覚えはない。いつの間にか近くに座っていた沖田はきっと気配を殺して入ってきたのだろう、こんな事に無駄な神経を使うなと思って不必要なほどいらいらとしてしまった。傍にいられるのがわずらわしい。沖田は訴えるような視線を土方に向けていてそれに気付いた土方は余計に苛立った。いつもは甘えてくるのだって可愛いと思うけれど、今は違う。いつもはどきりとする伏せ目がちの色っぽい表情、手を動かす怠慢な仕草、今はすべてが勘に触った。

「ぶたれたくねぇならでてけ」
「…」

一言。土方は別に今すぐ乱暴したってよかったのだから随分と優しい態度だったと自分では思う。けれど沖田にそれは伝わらなかったらしい別に自分は何もしていない、ただ部屋に入ってきただけでべたべた甘えるようなことしなかったし声だって少しも出していない、なのになんでそんなに冷たくされなきゃいけないんだ、って。それは全部土方の憶測だったけれどもきっとそういう事思っているのだろうそんな事考えてたら余計に腹が立ってきてしまった何も言わず動きもせず変わらずボケッと自分を見ている沖田にまたそれが煽られる。
こんな事で怒る自分を情けないとは思う未熟だとは思うだけれど今はそれを思う気持ちより苛立ちの方が強かった。パァンッと、良い音が部屋に鳴り響く。う、と、小さく声をあげて沖田が畳に転がった。赤く腫れ上がっていく頬をそっと手のひらでおさえて、痛みにたえる。だけれど沖田はまだそこを動くことをしなかった。土方は舌打ちをすると立ち上がる。

「でていく気、ないのか」

沖田のそばまで寄るとそう言ってしゃがみ込みガッと沖田の髪の毛を引っつかんだ。痛みに歪められる沖田の顔を無表情に見つめる。沖田も土方を見ていた。その顔がむかついてバシッ、もう一発、髪の毛ひっつかんだまま手加減なしで顔を打つ。痛みが広がって沖田は思いきり顔を歪めたけれどやはり土方をじぃと見たままだった。いらいらする、土方は思う。自分から目をそらして、髪の毛を強く掴んだまま立ち上がった。

「うっ…」

流石に沖田が声を出す。沖田は立ち上がろうとしたけれど土方が歩き出してうまくバランスがとれなかった。自然ひきずられるような形になってしまって頭が痛い。髪の毛全部ひっこぬかれそうだと思った。そのまんまダンッと大きな音がたつほど乱暴に廊下に放り投げられる。

「二度とくんな。めざわり」

冷たく見下ろされながら言われて乱暴にドアを閉められた。そのまんま、また沖田はそこでごろんと横になる。冷たいフローリングが心地よかった。普通ならそこで叩かれた頬を冷やすのだろうけれども沖田はそれをしない。そんなもったいないこと、沖田は鼻で笑いながら思った。
不機嫌な土方のいる部屋に行った戦利品は、赤く腫れ上がったほっぺたと、まだ鈍い痛みの残る頭と、最後の言葉に傷つけられた心。大事な戦利品の1つであるほっぺたの痛みをとりのぞこうなんてそんなことする訳がない。沖田は、土方に冷たくあたられたくてわざと土方の部屋へと行ったのだ。
土方はセックスの時も乱暴をしてくれるけれど、手加減をしているのを沖田は知っていた。叩くのだって縛るのだってペニス突っ込むのだってなんだって手加減なしにやってくれた事がない。沖田はそれに対してとても不満を持っていた。何をされるか分からない恐怖は沖田に他の何によっても手に入れることのできない安心感を与えてくれる不安を消してくれる。機嫌の悪い土方なんて沖田以外のその他誰にとってもこれ以上ないほど怖い存在であるけれど、沖田にとっては最高の精神安定剤なのだ。
いらいらさせてしまってごめんね土方さん、そっと心の中で呟くと沖田はそこを後にした。


END

とにかくあたしは叩かれる沖田が好きなの、それだけなの
と言い訳をしてみる
あの、なんか、本当すまん
いや、すいませんでした… 

  ドホック 060328