沖田は荒い息を繰り返していた。
全くの不意を打ってこられた一太刀はしかし今の沖田にとってはとてもラッキーなことでそれを避けた瞬間沖田はにやりと笑っていた。本来なら鬱陶しいと思うことだろうに逆に有難かっていた。沖田は、むしゃくしゃしていた。人を殺したい気分だった。思ってる自分に気付いて沖田はそんなこと思っていた自分をあぁ恐ろしいと、怖く思う。確実に自分の中の「常識」に入ってきている、人を殺すことが。いらいらをおさめる方法の1つとして沖田の頭の中にインプットされているのだ。
1人斬った時、いつも以上に気が昂ぶったのを沖田は感じた。昂ぶった気を落ち着かせる術を知らない沖田はただ息を荒くし感情が思うがままに行動をしてしまう。いつもより残酷に刀を振るってしまった。ぐちゃぐちゃになった残骸を見ながらけれども沖田は清々しい気分だった。むしゃくしゃした気分が消えていた。ごめんねありがとう、何の感情も入っていない言葉を吐いてそこを去る。しかし何の感情もこもっていないのは明確なことだったけれども感謝をしているのも悪いと思っているのも本当のことであるはずだった。だってむしゃくしゃの気分を解消してくれたし、殺してしまって悪いと思わないわけではない。ただだからって沖田は実際にはありがとうともごめんとも思っていなかった、そう思うのが普通だろうなぁと思って言っただけだ。沖田にはこういう事がよくあった、自分が思っているわけではない、だけれど普通だったらこういうのだろうな、と思ってそれを口に出すということが、多々あった。





「沖田隊長、お疲れ様です」
「ん、お前もお疲れ。も休んで良いんだぜィ」

ありがとうございます、返事を返しながらふっと山崎は視線を上にあげて、噎せ返るような血の匂いが掠めたのと同時に腕に返り血ではない、未だにどくどくと溢れでてくる血液が見えて息を呑んだ。

「っ、沖田隊長…、うで…」
「…あー」

いつの間にだろうか、沖田は気づいていなかった少し不覚だと、思う。首に巻いてたスカーフをとって腕にキツク巻いて止血をするだけでそのまま行こうとする沖田を山崎は止めた、手当てさせて下さいと。沖田は面倒だと思ったけれども傷は結構深くて放っておけば膿んでしまうだろう、膿めば近藤や土方がうるさく言ってくるに決まっているそちらの方が面倒なんではないか考えている自分に沖田はふと気付きそんな理性的な事を考えれていることに笑った。笑うと気持ちが少し落ち着いて、じゃあ頼むそう言うと山崎が嬉しそうにはいと言ったのが沖田の瞳に残る。


「珍しいですね、隊長が怪我なんて…」
「そうかィ」
「そうですよ、いつもかすり傷1つ負わせないじゃないですか」
「うん…」
「本当隊長って刀とシンクロしてんじゃないかってくらい扱いがうまいじゃないですか」

山崎が言うのを聞きながらそうでもない、心の中でだけ返した。そんな事言うの謙遜でしかないことを沖田は知っていたからだ。だけれど実のところ謙遜でもなんでもない沖田は自分が強いなんて思った事ただの1度もなかった。
どんなに自分より力量が低いと見える相手にも気は抜いたことなどない。全力でやっていた。強い奴ほど自分の強さを隠すのがうまい、弱そうに見えるやつほど強い、大体がそうなのを知っているからだ。
だからって沖田以上の腕の奴はそうはいない、それは沖田も分かっていたけれどもそれでも油断をするのはとても愚かな事だと、沖田は思っていた。ありえないことなんてない、それが世の常だ。沖田はどんな事でも、どんなにありえない事でも、受け入れる自信があった。いつどんな事があってもそれを甘んじる覚悟があった。

自惚れは最大の敵
化けモンみたいに強い相手なんざいくらでもいる

沖田がいつも肝に銘じていることだ。
誰もがその対象だった。
付き合いなんて関係ない。
沖田にとって初めてあった人も何年も前からの知り合いの人も毎日を一緒に過ごしている人すらその他誰もを同じと考えていた。

「(俺って知り合い甲斐のねぇヤツ…)」

思いながらけれども沖田は口の端を吊り上げて笑っていた。
ただね、沖田はふっと思ってちろりと山崎を見ながら思う。こうやって自分と全く正反対の、他人のことばっか思いやって他人の為に自分の身削るようなやつみてるとどうしてだか時々すっごく自分が悪いやつなんじゃないかって思えてくる時があるのだ今がそうだ。じぃと山崎の方を見ているとすぐに気づかれてなんですか、聞かれたけれど沖田は何も言わずただじぃと山崎を見ていた。そうしているとあっ、と気づく。ごめんねさっき殺した人、今度は心からそう思えれてそれがどういう事なのか沖田には全然分からなかっただけれどそう言えたことによって先ほど思ったすっごく自分が悪いやつなんじゃないかって思っていたその「すっごい」を少しだけ減らすことができて心のどこかに確かにあった呵責が少しだけ軽くなった。


END

沖田も本当は、本当に、殺してしまって悪いなと思っているの
でもそれに気付いてなかったの
こういうのを話の中に入れろっていうね 

  その差ミリメートル 060401