近藤が、猫を拾ってきた。
拾ってきた時から土方は嫌な予感がしていたのだ。だって近藤が最後に何かを拾ってきたのは沖田で、それからずっと沖田を大切にしてきていた。つまり沖田は近藤が何か拾ってきてそれを大事にするという姿を見たことがないのだ。ホラ!見てみろよあの目、土方は僅かに眉を寄せながら思う。あの目、とは、もちろん沖田の目のことである。近藤が猫の頭をよしよしと撫でたり頬ずりしたり、あまつさえちゅ、なんて唇よせたりなんてしちゃっている姿を瞳を薄く開いて冷たく、ただただじぃと眺めていた。滅多にする瞳じゃない、相当キレていらっしゃる。土方は悪寒に身を震わせた。



沖田と猫が一緒にいるのを見かけたのは庭先だった。
猫が屯所に居座りはじめて1週間ほど経つ。猫は近藤や山崎にそれはそれは可愛がられて、そして近藤に可愛がられれば可愛がられるほど沖田には半端ないほど憎まれていた。
沖田は猫の襟首掴んで持ち上げている。自分と目線を合わせさせてガンたれていた。猫相手に大人げねぇ…、土方は半ば呆れながらオイ!声をかける。

「コラ、総悟!!」

ひくんっと沖田の肩がはねた。悪いことしている時というのはあんまりに無防備だ。土方の存在に気付いてなかったのだろう、沖田はバツが悪そうにゆっくりと土方の方を向く。

「何してんだよテメェは」

言いながらゆっくりと沖田に近づいていった。沖田は嫌そうに眉を寄せて瞳を伏せている。だけれど開き直ったのかすぐに土方を強気に睨んできた。

「何って…ネコとたわむれてんでさ。見りゃ分かるだろィ」
「たわむれるの意味分かってんのかお前は」

どう見たって戯れているような雰囲気ではない。沖田はしらじらしく笑ってねぇポチー、なんて言いながら頭撫でてやっているがそいつはポチなんていう名前ではないし猫を見る目も笑っていない。

「たわむれるってのは喧嘩売るって事じゃねぇんだぞ、覚えとけ」

言いながら何かする前に、と、バッと猫を沖田の手から奪う。沖田はあ、呟いて、ちろりと見上げてきた。

「…」
「なんだよ」

睨むように見ているのだけれどそれは敵意がこもっているという感じではなく、土方は強く叱る気が失せる。沖田は不機嫌で面白くないというのを思い切り顔にだしていて、こういうの珍しくって沖田にこういう顔させれる近藤はやっぱりすごいよな土方も少し面白くないと思った。

「…土方さんまでネコの味方ですか」
「味方って…あのなぁ」

沖田はふいっと睨んでた視線をそらして瞳を伏せると僅かに唇をとんがらせる。いじけているように見えて思わず笑ってしまった。くしゃりと頭を撫でてやる。すぐに鬱陶しそうに払われてしまったけれど。

「ヤキモチ妬くのも、まぁ、わかんねェでもねェけどさァ。しょーがねぇじゃん」

土方は、沖田が怒って何がヤキモチでェおめェに何が分かるってんだこのヤロー!なんて詰ってくるのを覚悟していたのだけれど(だけどそれで少しでも気がすむならそうしてくれていいと土方は思っていた)、沖田はちろりと土方の方を見てふぅと溜息を吐いた。そしてそうですよねェ、意外にも賛同されてしまう。

「あれ?素直じゃん」
「だって…」

ちろりと沖田が瞳を猫の方へやった。さっきみたいにテメェ近藤さんとなれなれしくしやがって覚悟できてんだろォなコルァとでも言いたげな敵意満々の瞳じゃなくて、近藤がその猫を見る目と同じような瞳を、だ。

「近藤さんに愛されなかったらこの猫がここにいる意味ねぇじゃん」
「…」
「無理やり連れてこられたのに愛されないなんてかわいそう」

なァ、ポチー、猫に同意求めながらまた頭を撫でた。今度は慈しむように。だからポチじゃないって、土方は小さくツッコミを入れながらだけれど沖田がそんなこと考えていたなんて思ってもいなくて少し感動をしてしまっていた。あぁ近藤さんやりました、この子は、総悟は、人の(いや猫の?)気持ちの分かるとても良い子に育ちました!心の中で報告をする。

「でも俺より大事にされてんのはやっぱムカつくんだよ」

と、思っていたらボソッと沖田がそう言って土方の腕の中にいる猫をパシッと軽く叩いた。まぁこのくらいは別にいいかな、土方は思って怒らないでいたら沖田は何度もパシパシ叩いてきて流石に止める。やっぱり猫に沖田は近づけない方が良い、土方は苦笑しながら思った。


END

 

  エレクトランプレックス 060513