それは、反射的だった。例えば殴られそうになった時、何も考えていなくても相手の腕を掴んで殴られることを阻止しようとしたり避けようと体が動いたり反対に殴ろうと拳握ったり、そんな感じ。ただ違うのは殴られそうになった訳ではなかったって言うこと、ただ沖田が暑い、そう言って腕まくりをして白い腕が見えた、ただそれだけ、それなのに手首をぎゅうと強く掴んでしまったこと。だってあんまりに細くて綺麗だったものだから、一気に感情が高ぶってしまったのだ。
しんっ、と、なった。沖田の驚いたように開かれている瞳と目が合う。その時離せば良かった、いくらでも言い訳できた。腕邪魔だとか細い腕だなとからかったりとか、その瞳と目を合わせてる内にいくらでも言い訳が浮かんだだけれど口には出てこなかった。沖田は数秒そのまま視線を合わせて、それから斜め下にうつして、ぼそりと静かな教室内に似合う小さな声で言った。

「ひじかたさん…うで、いてぇよ…」
「っ、…わり」

つい力を入れてしまっていたらしい。離してやった沖田の手首にくっきりと痕がついてしまっていた。いや、沖田が掴まれた腕を撫でながら小さい声で言う。それっきり、また教室内はしん、と、静まり返ってしまった。もともとそんなに会話があった訳ではない。気まぐれにポツポツ喋る程度だったのだけれど空気が変わってしまった今、先ほどまでは気にならなかった沈黙が確かに重い。

「なに?土方さん、急に…」
「いや…」

沈黙も重かったがその質問の方が土方には重かった。いいから解けよ、くいと顎で沖田が先ほどまで必死になって解いていた数学のプリントをさす。土方は沖田の居残りに付き合ってやっていたのだ。

「いやだ。土方さん、なに?どうしたの」
「なんでもねぇって…」

いつもならこんなにしつこく問うことないくせに、土方は少し鬱陶しいと思う。そっぽ向いて懐をさぐる。だけれど目当てのものはなくてチッと舌打ちをした。

「じゃあ言いふらしてやる!土方さんが俺の腕掴んで犯しそうになったーって!!」
「ばっ、…か」

一瞬面白いほど動揺してしまって、土方はそれを隠すように頬杖ついて顔を俯ける。だけれど沖田からの視線を上から痛いほど感じて居た堪れない。

「犯すってお前はっ…、どっからでてくんだそんなの…」
「違うの?」

どうやら沖田なりに確信を持って言ったらしかった何の根拠もないくせにあたっているのだから鋭いと、土方は思う。あぁもういっか、全部言ってしまおうか、こういうの苦手なんだよなぁ面倒くさい、土方ははぁと溜息を吐いた。もちろん心の中で。

「押し倒されるかと思いやした」
「おっ、…」

何口走っちゃってんのこの子ーーー!!!どんな顔してそんな事言ってんのかと顔をあげたら先ほどと全く変わらない顔で、いつものきょとんとした顔で、沖田はいた。土方は呆れる。ほんっとこの子あれだな。

「(なんっにも分かってねェエ)」

やっぱだめだ、全部言っちゃうとかそういうのはなしの方向で、ハァと土方は次は口にだして溜息を吐く。沖田は怒って何か言っていたけれどそんなん土方の耳には入らなかった。


END

初々しい感じが書きたかったのん 

  それは 060516