山崎が副長室の前を通りかかると中から声が聞こえてきた。ほんの少し扉が開いていて、そこから沖田と土方が見える。見る気なんてなかったのだけれど自然と目に入ってきてしまった、うつむいている沖田と、それを瞳孔開ききった目で見下ろしている土方が。山崎は、もちろん素通りしようと思った。しかし1歩足を踏み出した瞬間土方の怒鳴る声が聞こえてびくんと一瞬身がすくんでしまう。そのせいで耳に入らなくていいはずの言葉が入ってきてしまった。 

「言えねぇんだな?」
「…」

低い声、ど迫力、威圧感、三拍子そろった、確かめるようにそう言った土方の声が聞こえてきて山崎は自分が言われた訳でもないのに冷や汗をかく。急いでそこを去ろうとしたのだけれど、それはできなかった。何も言わない沖田にチッと舌打ちした後土方が言ったのだ。

「おい山崎、鞭とってこい!」

え、あ、あ、はい!!、急に言われて山崎は吃驚する。ここいるの気付かれていたのかと、内心焦った。癖で無駄に元気よく返事をしながら、けれども山崎は土方のその言葉に見て分かるほど沖田の体がはねたのを見逃していなくてすぐに動くことができなかった。しかしオイ山崎!もう一度言われてあぁあすいまっせんすいまっせんすいまっせん!!心の中で謝りながら鞭をとりに急ぐ。やだよ、土方さん!沖田の高い声が聞こえてきて山崎の良心が痛んだ。やだ、やだ、何度か沖田の声が聞こえた後舌打ちする音とともにパァンッと肌を打つ高い音が聞こえてきてびくっと山崎の体がはねた。副長ォオオオ、思わず心の中で絶叫をする。続けて何度もパンッパンッと同じ音が聞こえてきてあぁあそんな乱暴な!山崎はまた叫ぶ、あくまで心の中で。
鞭を持って副長室に入ったら、叩かれたせいで赤く染まった沖田のほっぺたが目に入ってドキンッとした。あれ?ドキンッておかしくね?自分でツッコミをいれる。

「おせぇ」

土方は山崎からひったくるように鞭をとるとビシッといきなり沖田の体にそれを打ち付けた。うっ、と、低いうめき声をあげて沖田は畳に体をぶつけることになる。畳に横たわり眉を寄せる沖田の姿が酷く扇情的に山崎には見えた。ごくりと生唾のみこみながら、しかしじゃ俺はこれで…失礼しようとしたのにオイ、土方にとめられてしまう。

「丁度いい。オメェもここにいろ、見てけよ」
「なっ、んで…」

驚きで一瞬焦って口から言葉がでなかった。先に沖田に言われてしまって、見たいと思ってしまった自分の心を察せられる前にとそうですよ!同調をしておく。

「いやだよ、土方さん…」

不安そうに寄せられた眉、悲しげに伏せられた瞳、こんな表情を見るのは初めてで山崎の中には庇護欲がもわもわと芽生え始めた。副長がどう言ったってしらねぇぜ俺ァ沖田さんにこんな顔させるくらいならこの部屋出ていくぜぇ、焦りのせいで少し言葉遣いおかしくなりながら山崎は思う。

「ちょっと鞭で打つくらいじゃ素直になんねぇからなァ。仕置きだ」

そう言って、話し合う気はないのか土方が鞭を振り上げた。いよいよ仕置きが始まる、後で副長にぶん殴られたって構わない、さァこの部屋を離れるのだ俺!さァ!さァ!さァ!山崎は何度も自分に掛け声をかけるけれどいざ仕置きが始まると足が、動かなかった。目が、離せない。

「アッ、あっ、あ、…イヤ!いやっ、イッ、痛…」

なんて言ったってセクシーなのだ。高い声だして苦痛に顔歪めてもがく沖田。珍しく着ている着流しの合わせの間から足が太ももまで大胆に露になっている。それが妖しくうごめくものだからたまらない。そのむきだしの足に、のけぞる背に、しなやかな腰に、ひきしまった尻に、鞭が容赦なく打ち込まれていくさまは性的な欲をそそった。薄い生地のせいで体のライン全部見え見えだ、こんなに色っぽいのって他にない。

「いたァ!や、いやっ、…いっ、イッ、痛い!」

ビシーっ、バシーっ、なんていう生々しい音、普段なら顔歪めて自分が打たれているかのように痛い痛いと思うはずなのに何故だか今日はそんなこと一切思わないってゆーかむしろ、いけない気分になってしまっている。


ハッ、と、山崎が正気を取り戻したのは大分経ってからだった。

「ふ、ふくちょう…そろそろやめてあげても…」

沖田の白い肌は赤く染まっていて、沖田の顔は涙に濡れていて苦痛に歪められていて、山崎は罪悪感でいっぱいになる。1番は打たれる沖田に欲情していたことに、だけれども。


END

 

  ンカンカン 060603