「山崎ィ、好き嫌いはいけねぇぜェ」
「あ…」

山崎が朝食を食べていたら沖田がまん前に腰掛けながら言った。朝食に出てきたピーマンを避けて食べているのを目ざとく見つけられたのだ。山崎はすいません、これだけはちょっと…バツが悪そうに視線を横にそらしながら言った。そしたらなっさけねぇのって、ぷっと笑われる。しかし仕方ねぇな食ってやるよ、そう言って皿のはしに避けていたピーマンを沖田はぱくぱくと食べてくれた。すいません、言いながらそういえば、と、山崎は思う。よく食事の時一緒になるけれど沖田は好き嫌いせず何でもぱくぱくと食べていた。好き嫌い激しそうなのになぁなんて失礼なことを思ったのは秘密だ。

「えっらそうに…」
「…なんでェ土方ァ」

ぼそりと上からふってきた言葉は土方の口から出てきたらしい、いつの間にかそばに土方が来ていた。おはようございます!即座に挨拶をするとおうと不機嫌そうな声でこたえが返ってくる。

「おめぇだって昔ピーマン大嫌いだったろーが」
「あ…そうだったんですか?」

土方と沖田に向かって聞いたら沖田は嫌そうに眉を寄せて黙り土方はあぁとだけ返事を返した。そして土方が沖田の隣に座ったものだから更に沖田が嫌そうな顔をする。すーっと朝食ののったトレイを土方から避けるなんて地味ないやがらせもわざとらしくやってみせた。

「昔はすっげぇ偏食だったんだぜコイツ」
「ちょっと土方さん昔の話はやめてくだせぇ。不愉快です」

顔を顰める沖田を見ながらふ、と土方は昔へと記憶をめぐらせる。小さい頃沖田は偏食が激しくて、よく土方は食べろと諭してやっていたのだ。いや、あぁそうだと、土方は思い出す。











「何もなァ、俺ァ全部食えって言ってるわけじゃないんだよ」
「…」
「1口で良いから食えよ」
「…やだ」
「好き嫌いしてたら大きくなんねぇぞ」
「まずいからやだ!」
「…」

まだ土方が道場に来て間もない頃のことだ。沖田が夕餉に出されたピーマンを食べようとしないものだから土方は何とか食べさせようと躍起になっていた。しかし正直なところ土方は、別に沖田が何を好きだろうが嫌いだろうが何を食べようが食べなかろうがどうでも良かった。けれども沖田が頑なに嫌がるものだから食べたらどんな反応するのか気になってしまったのだ。偉そうに抗弁たれといてすいません、根性ひねくれてるんで俺ァ、土方は誰に言うでもなく心の中で思う。

「だって俺にいやいや食われるより好きな人にオイシイって言ってもらって食べられた方がピーマンだって幸せじゃないですかィ」
「そんなにピーマン思いやる気持ちがあるなら食えやァア!!」

ぐだぐだ言い合いしてんのが面倒くさくて土方は沖田の頭を引っつかむと無理やり口の中にピーマンを詰め込んだ。瞬間いつも子供にしてはあまりに変化のない表情が変わった。眉が寄せられて目尻に涙が浮かぶ。良い顔すんじゃん、思ったのは微塵にも顔に出さないでおく。

「うげぇっ、まっず…」
「おっ、総悟!」

ぺっ、と吐き出そうとした瞬間、近藤があらわれた。

「お前ピーマン嫌いだっただろ〜?ちゃんと食ってんのか?いいこだなぁ」

そして嫌いなピーマンを食べている沖田に気付きにこにこ笑いながら沖田を褒めた。吐きだす為に開かれた唇を沖田はきゅっとしめる。

「えらいなぁ、総悟は」
「…」

なでなでと頭を撫でられて沖田はぱちくりとまたたきをくり返している。撫でるその手が離されると沖田は少しの間考えるように真正面をまたたきを続けながら見ていた。そしてハッと気付いたように残りのピーマンも急いでもぐもぐと食べる。そうした後えらい?褒めて?とでも言う風に近藤を見上げた。

「おぉ、えらいえらい」

また近藤が沖田のふわふわの頭を撫でる。えへへー、言っていない、沖田はそんなこと一言も言っていないだけれど土方には聞こえた。沖田は頭を撫でられて満足そうに満面の笑みを浮かべている。



オィィイイ!!!?一呼吸置いて(別に意味はない)土方は心の中でツッコミを入れた。なんだその差はかっわいくねェ!!自分の時と態度が全く違う沖田をどこか虚ろに見ながらあぁ俺も、総悟の頭撫でてェ…なんてまったくもって邪まな上にほんの少しズレた事を考えたのを思い出したところで回想が終了する。



土方は、あまり思い出したくない思い出の1ページとその時感じたむかつきまで思い出してしまいフッと嘲笑した。

「…何嘲笑してんの」

もちろん過去にトリップしていない沖田と山崎は急に嘲笑しだした土方を不審そうに見る。何でもありませんよ、ふんと少しすね気味(分かっている、自分でもキモイとは思っている!)に言ったのに。

「あぁー近藤さん!」
「…」

近藤が食堂に入ってきた途端沖田はガタンっと立ち上がっておはようごぜぇます!元気に手ェ振りだした土方のことなんてほっぽって。ものすっごい笑顔な沖田を見ながらあぁ月日は流れたのに結局昔と何ら変わっちゃいねぇんだ土方は少し感傷にひたりながら思ってしまった。


END

 

  ほんのしも 060624