あぁ、抱きつきたい。
沖田はすました顔しながら心の中ではその一心で、その衝動を止めるのに必死だった。思い切り抱きついてあのすましている顔を驚かせたいだけどそれをするのは止めなければならない。だっておかしいではないか。大の男が2人でじゃれあっているのなんて、冗談にしたってちょっと笑えない、らしいのだ沖田にはよく分からなかったけれども。
沖田は小さい時から何にも変わっていないつもりでいるけれど、変わらずに土方のこと大好きで、いつだってくっついていたいって、抱き付き合っていたいって、思っているのだけれどそれをしたって何にもおかしくはないと、不自然なことはないと、思っているのだけれど。周りはそうは思ってくれない。きっと、土方も。いつの間にか時は過ぎていた。変わるのがいやなわけじゃない。ほんの少しずつ変わっていって変わったことにすら気付かなかったはずだった。だけれどふっと考えてしまうと違和感が確かにある。小さい頃と今と、その間の記憶がない。確かに歩んできたはずなのに、小さい頃から今へ一瞬で飛んできたような錯覚をしてしまう。だから小さい頃のことがとても身近に感じてしまって、ほんの数日前、数時間前、数十分前、数分前までのことのように思えてしまって、不意にとてつもなく土方が恋しくなる。土方に稽古つけてやったりしごいてやったりこきつかってやったり逆に喧嘩戦法教えてもらったりオンナのひっかけ方教えてもらったり、何の下心もなくじゃれあったり一緒の布団で寝たりしたこと。いつもぴったり隣にいて、1番近しい存在のはずだったのに、いつからか離れてしまっていた。今だってただの上司と部下以上の関係ではあるはずだ。友達なんて呼べない、だけれどそんなんよりもっと深い関係であると思っているのは、沖田のうぬぼれではないはずだ。だけれど、それでも、いつでも触れ合えるという訳ではない。もうそうして良い時期は過ぎてしまった。沖田はそれがすごく、寂しいのだ。

小さい頃は何も、何の建前もいらずに土方と触れ合うことができた。だけれど今土方と触れ合うのなら、触れ合いたいのなら、恋人というポジションにつかなければいけないらしい。違うのになぁ、と、沖田は思う。恋とか、そんな可愛らしいものではない。ただ、傍にいたいだけただくっついていたいだけただ甘えさせてほしいだけ。恋だとか愛だとかそんな今現在この世にある名称なんかでは表現はできない、この気持ちは、この感情は。ただ触れたいだけただ触れてほしいだけただ一緒にいて欲しいだけただ、ただただあの頃のまま、コドモの頃のままでこれから先の時を過ごしたいだけ。
けれど沖田はそうする術を知らない。ただただ、焦がれるだけだ。


END

軽くジャブ打つ感じでリハビリ
沖田と土方が友達って笑えるよね(…) 

  りじり 060725