どういう風の吹き回しなのか。何度誘ったってどう誘ったって全然ノリ気じゃなかったくせに。今日の誘い文句もいつもと何の代わりもなかったねぇ沖田クン送って行ってあげるよついでにパフェでもどう?あああちょっと待って、待ってください頼みます頼みますので送らせて下さい乗って行って下さいホントそれだけで良いんで襲おうとか微塵にも思ってないんでホント…ホントお願いしゃーっす!!どうにもカッコがつかないのにいつの間にかそれを帰りがけに言うのが定着してしまっていた。今日も寸分違わず同じだったはずだ。ただ違ったのは実は今日のネクタイの結び方、クロスノットなんです英国紳士気取りなんです。それか、それが勝因なのか。
だって乗ったら絶対に手ぇ出してくるじゃんアンタ、沖田はいつもそう言ってぷいっとそっぽをむいていた。いやいやハハッ!出さないよ出さない出さない、それに返す口先だけの言葉はいつも沖田に見破られる。だけどそれで良かったあぁそう手ェ出さないのそうですかィなら、そう言って乗ってこられたって、銀時が手を出さないでいられるはずがない。だから結果的に沖田が車に乗ってこないのは銀時の思惑通りではあるのだけれどやはり乗って欲しいと思うのは真実でありあれこれすっごい複雑大人ってのはなんでこう…、ぐすっ、いや違う違う。
運転席の隣に座っている沖田は、いつもと何の変わりない。すました顔していらっしゃる。シャツが第2ボタンまで大胆に開けられていて、細い首筋も綺麗に浮き出ている鎖骨も惜しげもなく露になっていた。銀時は何度も何度も盗み見る。ってゆーか、いつの間にか凝視していたらしく気付いたら軽く冷たい視線を向けられていた。だけれどちゃんと前見てセンセイ事故るから、意外にもふっと微笑して言われてしまってうーーわーーー、不意打ちのそれにあやうくハンドル操作を誤まってしまうところだった。しかし銀時は、逆に無邪気さに腹を立ててしまう。ブレーキを踏んで少し目を細めて真剣に、ねぇ沖田クンと、呼びかけた。

「本当に、」
「ん?」

ちらりと沖田がこちらを見たのが銀時には見なくても分かる。銀時はただ前を見つめていた。今沖田の方を向いたら自分を止められる自信がない。

「本当に俺が、手ェ出さないとでも思ってんの?」
「はい?」
「なんでそんな俺のこと信用してんの」
「…なんでって、」

銀時の普段とは違う真剣な雰囲気に呑まれてか沖田は少したどたどしく不安げに銀時を見た。だけれどすぐに不愉快そうに眉を寄せてハァと溜息を吐く。そして、怒ったようにも見えるむすっとした顔でちろりと横目で銀時を見た。

「全っ然、信用してないんですけど」
「え?」

予想外の沖田の言葉に思わず沖田の方を見てしまって、しまったと思う。むくれている顔がかなり、可愛らしかったのだ。勢いで手が出そうになってそれを必死になって抑えていたものだから思考が全く働かなかった。

「ならなんで乗っ、え、…え!?」

そうして漸く思考回路が正常になりだして、ある1つの仮説浮かんだ。だけれどそれは、かなりの自惚れかもしれない。待て、だめだ信用するな信用すると裏切られる信用しなければ裏切られないハイ深呼吸落ち着けェエ、冷静になれェエ、騙されるなァ、自分の欲望に騙されるなァア、とても焦っている銀時に沖田はさらりと銀時が望む言葉を言って下さった。

「手ぇ出されたくて、乗ったんですけど?」

まるで何でもないことかのように。その言葉によってどれだけ銀時が喜ぶのかなんて全く知らないのだろう、ホンット恐ろしいと銀時は思う。

「センセイ案外鈍いんですねェ〜…、俺もう降りよっかな」
「まっまっ、」
「ママ?」

言いながら沖田がカチ、とロックを外したものだから銀時は慌てる。待ってくだすわぁい!!思わず敬語ってゆーか変な言葉遣いになってしまってだけれども見えた沖田がにっこり笑ってくれていたから。思わずぎゅっと抱きしめてしまった。


END

 

  甘い律 061003