ああ、どうしてまた、




隊服を着たら、泣かない。
随分と前、自分で決めた約束だった。まぁなんだ、俺も幼かったからなァと、そう月日は経っていないのに沖田は過去の自分を笑う。だけれど沖田は未だにその約束を律儀に守っていた。大体泣くことなんて少ないのだけれど、今まで生きてきて涙を流した記憶なんて片手で数えて足りる程度なのだけれど、辛いから泣く、なんて考え、沖田にはなかったのだけれど、だからその約束は破られる確率がとても低かったのだけれども。しかし、ある日を境に変わってしまった。沖田は知った。辛いということを。辛いと涙がでてきてしまうんだということを。沖田は知らなかった。辛いということがどんなものかを。



ああ、どうしてまた、刀を振り下ろすことができるのだろうか。

あんなに辛いんだと、悲しいんだと、苦しいんだと、切ないんだと、人間1人の存在がどれだけ大きいものか尊いものか分かったはずなのに思い知ったはずなのにどうしてまた、それをすることができるのか。自分と同じ思いをさせることができるのか。

人に良い人間だと思われたいなんて思ったことはない。ってゆーかどう思われたって良い気にしない恨まれたって憎まれたって構わない人がどんなに辛いめにあうのだって気にしない自分じゃないんだもの辛いのは。大体辛いって何悲しいって何自分と同じ生き物がそんな感情持ち合わせてるなんて腹立たしいほど鬱陶しい!弱い奴大嫌い!辛いなら死ねば良い悲しいなら死ねば良いそうしたら辛くも悲しくもないホラなんて素敵な方法!沖田は死を素晴らしいと思っていた。

「(ばーーーーーーか!!!)」

タイムマシンがあって、過去の自分に会うことができたら、目の前にいたら、思いっきりぶん殴ってやりたい。

「(そんな風に思っていたから!)」

素敵な方法!と、沖田は信じて疑ってなかった。

きっと、

「(だから…)」

思い知らされた。1番残酷な方法で。自分が死んだって何とも思わない。自分が死ぬのなんて怖いと思ったことすらない。だけど、だけど、あぁ、と、沖田は思う。滲み出てくるそれを抑えることができない。ハッとする。今何を身に纏ってると思ってんだと。だけれど、抑えきれないそれは静かに沖田に反抗をする。
きっと姉上は辛かったんだ。辛かったから素敵な方法を…素敵な方法?ハッ!笑わせる。今気付いたって遅い。

しかしそれでも、それでも、

「(俺ってば人を殺せる)」

まだ懲りてないの?だけれどこれ以上辛いことってない。なら、と、思ってしまう。こんなクソ極悪野郎早く死んじまえ!





END

題名はくうちゃんの歌詞より引用です 

愛はなない 070826