時々、アイツの身体の中は空っぽなんじゃないかと思う時がある。脳みそも心臓も骨も血も肉も詰まっていない。ただ薄っぺらいカワ一枚あるだけでその中は空洞なんじゃないかと。少なくとも自分と同じ人間ではないと土方は思っていた。人間にもきっと種類があってその中でもアイツは感情と言う機能が働かない種別なんだと、半ば本気で思っていた。もしかしたら遠い星から来た天人なのかもしれないとも思う。でなければ誰もが思わず顔を顰めてしまうほどの、噎せ返ってしまうほどの、血の匂いがするこの場所で。へらへらと笑っていられる訳がない。綺麗に笑いながら人を斬れるはずがない。嫌悪なんて勿論する訳ではないけれど正直少しおかしい奴だとは思う。狂っている。彼にピッタリの言葉だと思った。





ここまで痛烈に言った訳ではないけれどそれに似たような事を土方はついポロリと沖田に言ってしまった。彼の今日の余りにも凄まじい殺しっぷりが土方の口を滑らせたのかもしれない。土方自身も、いつもより人を殺してしまい気が昂ぶっていたのかもしれない。
余りに悪逆な言葉にけれど沖田は眉一つ動かさずに、代わりに少しだけ唇の端を上げて言った。

「土方さんだって、」
「土方さんだって斬る時笑ってますぜィ」

詰るでもなく責めるでもなく、ただ淡々と事実を述べる沖田に。
血の気が引いた気がした。

「今だって、何でもないような顔、してるじゃないですかィ」
「同じでさァ」

ふと土方を見上げ切なげに微笑いながら、何とも受け取り難い表情を見せて、沖田が そう言った。

「俺も、土方さんも」

思わず嘲笑が漏れた。


「(同じ?)」


吐き気が、した。


END


自分の事を分かっていなかった自分に、ね 

 血のシニスム 041217