ポケットをまさぐってみたら五百円玉1個と百円玉4個、十円玉が6個にピンク色の紙くず(きっと飴ちゃんのだと沖田は予測する)が3つ、チョコレートが5個、土方に無理やり入れられたハンカチが1枚、あとは何か書いてあるよく分からない紙が1枚、でてきた。紙くずはゴミ箱に捨てて、チョコレートは口の中にいれて、何か書いてある紙はとりあえずまたポケットに突っ込んで、五百円玉1個と百円玉4個と十円玉が6個(きゅうひゃくろくじゅうえん)で、切符を買った。残ったハンカチは駅のホームの柱にくくりつけておいた。意味はないけれどなんとく。

沖田は、電車に1人で乗るのなんて初めてだった。どこでどう乗れば良いのかよく分からなかったけれどもとりあえず目の前にあった適当な電車に乗ってみる。すぐにプシューと奇妙な音をたてて閉まったドアに沖田はもたれかかった。ガタンゴトンと音をたてわずかばかりに揺れながら電車が動きはじめる。移りゆく景色がどうにも新鮮で、こんな町並みいつも見てんのになって首を少し傾げさせた。暫く立って、窓にぺたりと手をあてて外を眺めていた。大分経って座ったけれども落ち着かない。また外を見て飽きもせず移り変わる景色を眺めた。何度かドアが開いて閉まって開いて閉まって、沖田は見たことない景色に見とれていて、気付いたら、随分遠くに来てしまっていたみたいだった。


とりあえず電車から降りて、ホームできょろきょろしていたら、車掌が声をかけてきた。何してるの?迷子?ううん、ここどこ。なになに…、切符を見せてといわれて沖田は大人しく言われた通りにする。これでも困っているのだ。

「あぁ、お嬢ちゃん、これ2つ前の駅だよ」
「……」

突っ込むべきか否か迷って、突っ込まないでおいた。

「2つ前?ここじゃ降りれないんですかィ?」
「280円あれば行けるけどねぇ…」
「ねぇや」
「ならほら、ここから乗って2つ前の駅でおりなよ」

親切に言ってくれて、車掌は沖田を電車まで案内してくれた。ドアが閉まってからきまぐれにバイバイして、沖田は言われた通り2つ前の駅で降りた。その頃には、辺りはもう真っ暗だった。暫く駅のベンチに座っていたけれどもう電車は来ない。どうやら終電だったらしい。沖田は駅を出ることにした。



「ちょっとちょっと君!」

だけれども駅を出てすぐに後ろから、声をかけられた。厳粛な声。隊内でよく聞くような。いやな予感がして後ろを振り向けば、国家権力の象徴を着ていらっしゃる方が目に入った。

「未成年でしょ?何やってんの」
「…」

まあ未成年ですけどお!?まさか補導かよマジでか!?沖田は笑っちゃいそうになりながら(全く顔には出ていなかったが)どうしようかと思ってとりあえず、言ってみた。

「しんせんぐみでさぁ」
「…何言ってるんだ」

勿論、信じてもらえなくって馬鹿にしたようにそういわれる。

「住所は?」
「真選組屯所」
「あのねぇ、」

悪ふざけも大概にしなさいと言われて沖田はちょっといらっときた。事実を言っているだけなのに。

「本当でィ」
「証拠は?」
「……」

そこを言われると痛いんだけどなァ、太刀筋でも見せてやろォか、半分本気になって沖田は左腰へ手をやるけれど目当てのものはなく空を切った。土方のヤローに取り上げられたのを忘れていた。私服の時はむやみに持ち歩くんじゃねぇうんたらかんたらと今朝言われたことを思い出す。

「あっ、局長の名前が、近藤勲で、副長が土方…、…土方」
「…名前は、真選組の方じゃなくても言えるからねぇ」

しかも副長は覚えてないのか!?軽くツッコミ入れられて沖田はむくれる。だって土方さんとしか呼ばないんだもの。

「電話すればいいだろィ」

沖田が言えばそんなバカな事であの真選組に電話できるか!人の心よむのに長けている沖田が言われた訳ではないけれど心内をよむ。

「じゃあ俺が電話しまさあ」

ケータイ貸して、手を差し出したらまぁ携帯電話を貸すくらい害はないと思ったのだろう。素直に差し出してくれて、だけどそこで沖田は首をかしげる。

「…番号わかんねぇ」
「…」

警官が心底呆れたように溜息を吐いた。

「はいはい、もう分かったから。何か身分証明するものは?持ってないの?」
「わっ」

いきなりポケットに手ぇ突っ込まれて何すんだって思ったけどされるがままになってやった。なんだかもう投げやりだ。ポケットの中には電車に乗る前に突っ込んだ何か書いてある紙が入っていた。

「何だね、これは。番号のようだけど…」
「あ…土方さんの字」
「…」

なんか突っ込みたそうな警官をシカトして書かれている番号に電話をしてみることにした。ピッピッピッピッピッ…プルルッ

『もしもし』
「あ…ひじかたさーん」
『…ッ、うご、テメェ…どこほっつき歩いてんだこの馬鹿やろぉオオ』
「わかんない。電車乗ってきた」
『ハァ?電車なんて乗ったことねぇくせになにやってんだよ!ばか!』
「ねぇー何やってんだろうねぇー」
『……で?今何処だよ』
「わかんないってば、あ、けーさつの人に代わる」
『は?』

何警察の人って、そう言う土方の声を聞く前に携帯電話を警官に差し出した。土方の怒鳴り声が電話機からもれて聞こえていたのでどうにも本当に電話の相手があの鬼の副長であることが警官にも知れていた。緊張しながら電話を受け取る。

「お疲れ様です!あの、真選組の隊士と名乗る方が…」
『あー…とりあえず今何処?迎えいくわ』
「はい、えーと」

詳しく場所を説明している警官の横で沖田はあー土方さんがくるのかぁってちょっと憂鬱になった。きっと怒られてしまう。どうしようかなぁ、そうこう考えている内に電話が切られて、すぐ来られるみたいですからね、さっきとうってかわった態度の警官に沖田はハァと溜息を吐いた。












「お前ね…、…恥をかかせるなよ」

思い切り叱ってやりたかったのだけれどもなんかもう怒鳴るのも面倒臭くて土方は脱力した。ハァと溜息を吐く土方を尻目に、沖田は土方が怒らないのを良い事ににっこりとする。

「土方さーん、電車って面白いですねィ」
「…」

にこにこしている沖田に若干いらついてほっぺたぎゅーとつねってやった。今回はこれで許してやることにする。お前は馬鹿なんだからもう勝手に遠く行くんじゃないぞ、言っててあれこれなんかおかしいなコイツもう18だろって思ったけどはぁいって沖田が良い返事をしたからまぁ良い事にしておいた。




END

 

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