何だか沖田が、妙に冷たい。のは、いつものことなのだけれどどうも今日はそれに拍車がかかっている気がする。もそもそとリスのように可愛らしくご飯を食べている沖田からはどうにも恐ろしいオーラが発されている気が土方にはした。

「総悟」

勇気を出して声をかけてみる。だけれども返事はなかった。聞こえないかのようにぱくぱく飯食ってやがる。土方は、軽くむっとする。短気なのだ。

「総悟」

もう1度呼んでみるけれど結局同じだった。英語でいうとonly to Vえ?どうでもいい?受験生には大切なことなのだよ、いややっぱりどうでもいいだって俺受験生じゃねぇもん、今大事なのは沖田がシカトしていることだなんなんだよこのガキまじ腹立つ!土方がだんだんとキレてきたのが近藤に伝わったのか近藤がフォローに入ってきた。

「オーイ、総悟くーん?トシが呼んでるよ〜」
「…」

そこで何の反応も示さなかった沖田は漸く箸を止めた。そしてギンッと思い切り睨んできたものだから土方は一瞬だけ怯んだ。本当に一瞬だけだけど確かに背筋が凍った。何て目付きしやがるんだよガキの癖に!なかなか良い気迫を持っている、いやそれはまた違う話になるのでおいておいて。

「総悟、何か言いてぇことがあんなら言え」

思い切り睨み返せばそこはやはりまだ子供。すぐに目ぇ逸らしてきてちょっと勝った気分になる。虚しい勝利だ。かと、思ったら。

「ひじかたしね」

ぼそりと呟かれてプチンと切れやすい堪忍袋の緒が切れた。コルァアア上等だコルァアア机ひっくり返そうとしたら近藤に止められ沖田ぶん殴ろうとしたら近藤に止められ兎に角近藤に止められた。なので沖田は涼しそうな顔してお食事を続けていやがる。ふざけんな!
沖田は、チラリと土方の方を盗み見て自分とは違う漆黒のそれを見て思いを馳せる。




長い黒髪が風に吹かれて舞うのがとても綺麗で、近寄りたくて、手に触れてみたくて、手を伸ばした。だけどそれに触れたのは遠くにいた自分じゃなくて、近くにいた綺麗な女の人でむかついた。と、思いたかったけれど悲しかった!そしてまた悲しんでいる自分に悲しんだむかついた。
おい、くすぐってぇよ、鬱陶しそうにすぐに払われたけれど羨ましくて妬ましくてたまらなかった。そんな感情知らなくって、教えてくれちゃった土方が異様に腹立たしかった。殺意が芽生えた!




END

 

しみの果実 080330