「ちっくしょうあのやろ…」

沖田はよっこいしょと起き上がるとはぁああと溜息を吐いた。ぺたぺたと布団を触ってみる。もう冷たかった。だからなんだって訳じゃないけどむかついた。ひとこと声かけていくのが礼儀なんじゃないの?よく知らないけどさァ。だいたい体中がいてーよあのやろーふざけんなっ!もう仕事とかやってらんねーぜってゆーかもう起きたくないってゆーかもうこのまま寝てたいってゆーか土方に、

「会いたくねーーっっ」

アイツにとったら別になんてことないことだったんだろうけれど、沖田にとってはおおごとだった。始終いやがってみせたけれど、ほんとは、

「あーーっっ」

考えたくなくって大声だしてふるふると頭を振る。ばたんっと布団に転がるとひどく腰が痛んだ。腹が立つ。腹が立つ!むかつく!むかつくー!ぱたぱたと足をばたつかせてみたけれど体全体が痛くなってやめた。はあ、溜息を吐いてからまた起き上がる。

「…着替えよ」

なんだか虚しくなってのそのそと立ち上がる。全身に痛みが走った。痛い!痛い!痛い!ちくしょー!これ今日仕事できんのかなこれ。沖田は珍しくデスクワークをしたいと思った。









「おはようございます!…って、あれ?」
「…はよ、何?」
「いや、今日は沖田さん風邪ひいたんで休むって副長から聞いてたんで…」
「ハ?……風邪ひいてねーし。」
「本当ですかぁ?大分酷いって聞きましたよ。休んでおいた方が良いんじゃないんですか?」
「……」

土方の妙な気の回しようが逆に腹が立った。だけどさっきから一歩歩くごとに体に響いて痛くてとてもじゃないけどこのまんまいつもと同じように勤務するなんて無理だって思っていたところだった。沖田はくるりと回れ右した。

「…寝る」
「あ、はい、お大事にしてくださいね」

そうだ。どうせ土方にだって会いたくなかったわけだし、部屋にいれば会わずにすむんだから良いことだらけじゃないか。

って、思ったんだけど。




「おー、総悟」
「…」

おー、総悟、じゃ、ねえだろ!?ぶっとばすぞテメェーー!!なになれなれしく名前呼んでんだよ何気軽に部屋に入ってきてんだよぶっとばすぞテメェーー!!沖田は呆れと怒りで何も言えずにいた。

「大丈夫?」

な、訳、ねえだろ!

沖田は怒っていたので一言も言葉を返さなかった。なのに土方は遠慮せずずかずかと部屋に入り込んできて沖田が寝ているそばにどかりと座った。何この偉そうなやつ何こいつ何まじ何さまなのまじ。

「…総悟、こっち向けよ」
「…」

沖田は土方と反対方向を向いて寝てみた。おまけに布団も頭までかぶってみる。だって腹が立つんだもん。なに普通に接してきてるの?おれたち、きのう、きのう、

「ヤっちゃったなー」
「っっ」

なんのためらいもなくあっさり言ってくれやがってコノヤロォー腹立つやっちゃなー。どうせ性欲処理がしたかっただけだろーがこのやろーむかつくんだよ!帰ってくんねーかなー!帰る途中で石に蹴躓いて頭打って死んでくれねーかなー!むかつくんだよ!!

「でもまあ限界だったんだよな」
「…」

意味わかんねーしわかりたくねーしシカトをする。少し沈黙になった。おおお何この居辛い空気!やめてくんないかなー出てってくんないかなー死んでくんないかなー!沖田は寝ることにした。だけど土方はおしゃべりをやめない。

「だってお前日増しに可愛くなっていくんだもん」
「…」

なにいってんのコイツなにいってんのコイツ!聞こえねぇ意味わかんねぇ知らねぇ知らねぇ知らねぇ!理解したくなーーい!

「我慢できなくなって…って、オイ、きーてんの?」
「…」

ぐい、と肩を強く引かれた。一瞬だけ視界に土方が入ってきた。どきんとする。

「じゃあなにも…」

しぶしぶ、沖田は口を開いた。

「あんなにひどくしなくたって…」
「お前が暴れるからだろが」

沖田は目を伏せる。でもそれにしたって酷かった!今日の朝だってさっさと帰っちゃうし!

「土方さんてぇ、おれのこと好きだったんだ」
「うん。お前も俺のこと好きだろ?」

は?何言ってんの?冷めた口調でサラっと言ってやろうと思ったのに言葉が出てこなかった。









END

 

ラノス 0801106