| あの慣れ親しんだ道場な訳ではないのだけれども。 つぎはぎだらけの薄汚れただけれども大好きなあの道場とは違う。床だって壁だって天井だってこっちの方がよっぽど綺麗で似ても似つかない、この道場とあの道場をどうやったら重ね合わすことができるのだろうと沖田だって不思議なのだけれど不意に、目にうつる綺麗な床が傷だらけでぼろぼろでだけれど綺麗に掃除されてほこり1つ落ちていないあの道場の床に見えることがある。そうなると沖田の頭は、思考は、心は、気持ちは、小さい頃に戻ってしまう。きゅううんと、胸が締め付けられたような気になる。 「ひじかたさん」 「うっわ」 呟きながらぎゅうと、沖田が正面から抱きついてきた。土方は驚いてそしてどうして良いか分からなくて、えーと、言いつつ沖田をそっと離してみようと試みる。しかしいやだと言って余計に強くしがみついてこられた。総悟、少し困ったように言えば沖田が胸板にうずめていた顔をひょこりとだして、土方の目を見た。 「なんで?」 「…」 「だめ?」 どうにも何にも言えなくて黙っていたら沖田がまた顔をうずめてぎゅうと一際強く抱きしめてきた。そしてすりすりと頭を甘えるように動かしてくる。そうされていると、いつもの生意気でほんっと憎たらしいと思っている沖田が可愛くみえて、いや可愛くというよりも、 「むかしはよくこうしてくれてたじゃん」 そう。昔の、まだ小さい頃、自分の背の半分ほどしかないくらいちっちゃくてよく抱っこしてと甘えてきていたあの小さい頃の沖田を、土方に強く思い出させた。今の沖田はすかしていてつんつんしていて素っ気無くって本当に可愛いなんてほんの少しさえ思わないのだけれども小さい頃は本当に可愛かったのだ。大切にしてやろうと思った、精一杯甘やかしてやろうと思った、何でも我がままきいてやろうと思った。そのことを土方は思い出していた。 「忘れちゃった?」 「…覚えてるけど」 「なら良いじゃん」 「うん…」 いや、うん、じゃねぇよ!!!?何素直に返事してんだ俺ェエエ、こんなところ誰かに見られたら俺はもう恥ずかしくて副長やっていけません、なんて言ったら沖田が喜ぶだけだだめだだめだだめだ、だから早く沖田と離れなきゃいけないのに、沖田がん、んん、なんて久しぶりにきく甘い声出しながらぎゅうぎゅう抱きついて頭胸板に擦り付けてくるものだから自然に頭に手が伸びてそれをなでなでと優しくなでくりしていた。あぁあ何やってんだよホント何やってるんだよ思いながらも手は止まらない。さも大事なものを扱うかのように愛しげに頭を撫で続けている。もう仕方ないから土方は誰もこないようにと祈るだけだった。 END |
| リサイクル ノスタルジック 0801109 |