「んんーー…」

目が覚めて、時計を見たら8時少し前だった。よく回らない頭で考えてももうこの時刻では始業時間までには間に合うまい、そう思って沖田はもう一度枕に突っ伏した。最近は余り寝坊しなかったんだけどなぁとうつらうつらしながら思いその理由が最近は携帯のピピピと言う無機質な可愛げのない音に起こしてもらっていたからだと思い出した。恋人らしい言い方をすれば、モーニングコール。もちろん、土方からのだ。それが今日に限ってなかったものだから自分はしっかり寝坊してしまったらしい。(けれども8時前に起きれた事を自分で褒めてやりたいと沖田は思っていた。)

そしてそういえば、昨日は土方と喧嘩してそのまま別れたんだったと思い出す。次の日になってもまだ尾を引いているなんて、土方さんも案外子供だと思って、沖田はクッと笑った。クックと続けて笑いながら布団をかけ直してもう一度寝ようと思ったのだが色々考えてしまったからか眠気が覚めてしまい沖田は閉じていた目を開いた。そうすると枕の隣に置いてあった携帯が目に入り何となくむかついてそれを床に放る。そうしてから沖田は起き上がり伸びをした。

「ふわぁ…」

大きな欠伸を一つしてこしこしと目を擦る。制服に着替えようかと思ったがお腹が空いていたので取り敢えずご飯を食べる事にした。授業は、遅れていけばいいやと思った。どうせなら行かなくても良いとも思った。

のそのそと一階まで降りていき母親が作っていったと思われる朝御飯を食べる。誰もが忙しく動き回る朝とは思えないほど穏やかな雰囲気を作り出していた沖田にけれどもピンポンと高くなったチャイムの音と同時にその雰囲気は壊された。面倒臭くて出なかったら続けざまにピンポンピンポンと鳴らされ少し腹が立つ。うるせぇなぁ朝飯くらいゆっくり食わせろよ、と心の中で悪態をつきながら取り敢えずツラは拝んでやるかとインターフォンのカメラが写っている画面を見る。けれど見えた顔に沖田は思いっきり顔を顰めた。

「(げぇ…ひじかたさんだ…)」

画面に映っているのが昨日最後に見た顔と同じくしかめっ面の土方だと言う事を確認してから沖田はべ、と舌を出してぷいと画面から顔を背けた。迎えに来たのだろうけれどもう今日は家でゆっくりしていたい気分になっていたので今更学校に行く気など起きない。大体朝、電話をくれなかった癖に今更なんだ、と沖田は勝手に思った。構わず朝御飯を食べ続けけれどガチャリと玄関のドアが開く音が聞こえ沖田はぴく、と反応した。

「おい総悟!!」

大きな声で怒鳴られて少しビクリと身体がはねた。ドスドスと無遠慮にも家の中に進入しあまつさえこの部屋へと近づいてくる土方の足音に母ちゃん鍵閉めていなかなかったな、と沖田は母親を恨む。それから電話、くれなかった癖になんだ、と沖田はもう一度思った。大体今はもう8時少し過ぎで土方の自転車に乗って行っても始業に間に合うかどうか、の時間だ。中途半端な時間に着やがってと心の中で悪態を吐く。バンッと大きな音を立ててドアを開けた土方を上目に睨みつけながら沖田が言った。

「ひじかたさんかってに入ってくるのはやめてください!ふほうしんにゅうですぜィ」
「ばっか!お前何のん気に朝飯食ってんだよ!完璧遅刻だぞ!」
「うるさい…おれははらがへったからくってるだけでィ。もんくいわれるすじあいねぇや」
「食いながらでも行けるだろ!ほら、行くぞ。お前ただでさえ授業サボったりして先生への感じ悪ィんだからよォ!」
「なめこがたべたい」
「はぁ!?何言ってんですか俺の話を聞いてなかったんですかつーか大体お前なめこ嫌いだろう!!」
「うるさいなァ!みみもとでさけぶのはやめてくだせぇ!!」
「お前もな!!」

いつものように言い合ってけれども土方はハッと気付く。沖田はいつも訳が分からないが朝はいつも以上に訳が分からないのだ。理由は至って簡単、低血圧だから だ。いつもは沖田が電話に出たら大きな声を出して起こしてやっていたのだ。(その起こし方に沖田は不服そうだったが土方の方こそもっと良い起こし方があるなら提案して欲しいと思っていた。朝から大声を出される方も辛いだろうが出す方だって同じくらい辛いのだ)舌足らずな喋り方や微妙に噛みあわない会話からしてまだきっと寝ぼけているのだろう。仕方ねぇなぁ、と、土方は思いゆさゆさと肩を揺さぶりながら言った。

「そうごくん…起きろー」
「何いってんでぃ、起きてまさァ。俺が寝てるんだとしたら今あんたと喋ってんのは誰ですかィ」
「いやだってお前みそ汁にソース入れてんぞー…」
「なんですかィみそ汁にソース入れちゃだめなんですかィ土方さんに俺の味付けにケチつける権利はねェや!」
「……良いから起きろや」

そう言ってバシッと少し強めに沖田の頭を叩いた。

「いってェエっ…んっ…、あれひじかたさん…」
「……おう」
「ん、あァ!俺のみそ汁の中に黒い液体が…!」
「ソースな。…言っとくけどお前が自分で入れたんだぞ」

じ、と自分を恨みがましげに見てくる沖田に誤解されたら堪らないとばかりに土方がすぐに突っ込んだ。

「ほら、もう行くぞ!飯は俺のパンやるから自転車乗りながら食え」
「えー、うーんめんどーう今日はなんかもういいや…なんかもう疲れた…」
「まだ何にもしてないだろ!それに今日はお前近藤先生が来る日だって楽しみにしてたじゃねぇか」
「あぁっ!…そっかぁ…本当だぁ…」
「んだよ昨日近藤近藤うるさかった癖に忘れてたのかよバッカ」
「うん」
「ばっかだな」
「うん…なんかいつもすみませんねぇ」
「本当にな!!」

言いながら、土方は本当になんで自分はこんなにこいつに構ってやらないと気が済まないのだろうかと自分に苛ついた。けれども、沖田を放っておく方が苛立つのだから、仕方がない。深い溜息を吐きそうになるのを抑えて昼御飯用に買ったパンを沖田に渡してやった。沖田が着替えるのを待っていたからまた5分くらい時間を潰してしまって、いよいよもう間に合わないだろう時刻になっていたが土方は余り悪い気分はしていなかった。とりあえず、沖田を放って学校に行くよりは。


土方の肩に手を乗せてはむ、とパンを頬張りながら沖田はというとふ、と笑っていた。そして昨日の喧嘩の理由は明らかに土方が悪かった(と沖田は思っている)ので、当分許してやらないと思っていたし最近遅刻しないなァとそこそこ気に入ってる銀八先生に褒められて少し嬉しくてこれからも遅刻しなければ良いなァと思ってたところに今日土方のせいで(と沖田は思っている)寝坊してしまって少し苛立っていたのだけれども、全部チャラにしてやるか、と、思った。
土方が一回学校に行ってから、また自分の為に自分の家まで戻ってきてくれたのに、気付いたから だ。今沖田が頬張っているパンは学校にしか売ってないパンだ。だからこの寒いのに汗だくで体力だけはあるくせに息を切らせていたのだと、そう思って沖田はどこかくすぐったいような感情を感じ笑みを浮かべた。


END


低血圧の子って何するか分からないけど可愛い
しかし驚くほどに話が纏まってないなハッハハ 

 ゲットップ! 050117