チラ、と、ほんの数十秒前にも見た時計を見てみたら当たり前だが先ほど見たのとさほど変わらずの時間だった。7時、46分。あ、47分になった。そう思った後自分はもう47分も待ったのかと、苛立ちを感じそれをこめかみを軽く叩く事で発散させる。本当にいい加減にしろよ、と、もう何度も思い描いた怒りの言葉を頭の中でもう一度言って、その後に続く文句の言葉も頭の中で叫ぶ。
何度目だよ遅刻するの!何やってたんだよ!連絡くらいしろ!
そう大声で怒鳴ってやる少しくらい叩いてやっても良いかもしれない。叩かれねぇと分からねぇんだアイツは、って、叩いた事なんてないから叩いても分かるかどうかわからねぇけどでもだってアイツの顔はあんまりにも叩きづらいんだ、目なんてパッチリとしてるし睫長いし少し叩いただけで吹っ飛びそうだし、と土方の愚痴が惚気へと変わった頃、不意に顔を上げた土方の目に沖田が映った。

「そう、!」

名前を呼ぼうとしてけれど沖田の横に沖田のクラスの担任の銀八がいるのも見え土方は顔を顰めた。何を話してるかは分からなかったが暫くした後じゃあね、という沖田の可愛らしい声だけは聞こえ愛らしい笑顔で無邪気に手を振っているところまで見えてしまった。 だから土方はぱたぱたと小走りで近寄ってくる沖田を思いっきり不機嫌そうな顔で見ながら口を開いた。

「ンだよお前…アイツといたのか?」
「え、うん。…なんか、お菓子くれるって言うから」
「そんなんについてくなよ!馬鹿か!?ってかお前俺との約束は何?忘れてた訳?」
「忘れてたらここに来てるはずないじゃないですかィ」
「………。兎に角なんだよ、菓子でつられたのか?幼児かお前は」
「だって土方さんお菓子とりあげるじゃないですか」
「お前食いすぎなんだよ」
「センセはもっと食ってるもーん」
「糖尿病になりてぇのかよ!」
「馬鹿ですかなりたいわけないじゃないですかィちゃんと自分で制御してるんでだいじょぶですぅ」
「あれで!あれで制御してるのか!?ハッ!糖尿病になって苦しむさまが目に浮かぶぜ」
「え、土方さん病気ですかィ!そんなのが目に浮かぶなんて病気に決まってる!大丈夫だろうか…近くに精神科病院はあっただろうか…」
「うるせえ!」

怒鳴れば土方はまた沖田は可愛くない口をきくのだろうと思って何でこいつは一言ごめんとか悪かったとかそういうのが言えないのかと頭を痛くしたが土方の予想に反し沖田はフフと可愛らしくけれど何かいやなものを含んでいそうな笑いを零しながら土方を上目に見上げた。

「なんて、本当はウソ」
「………」
「土方さんには教えちゃっていいかなァ」
「…ンだよ」

にやにやと意地悪く笑いながらそう言って続きを急かす土方を焦らすように沖田は瞳を逸らし少し目を伏せた。けれどくり、とした目がまた自分を見上げたかと思ったら沖田が口を開いた。

「ちょっとね、進級が危なかったんでお、ね、が、い、…しに行ってたんでさァ」
「ハァ?おねがい?」
「違いまさァ。お、ね、が、」
「ハイハイお、ね、が、い、な!…どんなだよ」
「知りたいですかィ?」

言いながら腕を上げて後ろ髪を撫でる沖田のその仕草に色っぽさを感じてしまい土方はスと目線を逸らした。厚手のコートの上からでも線の細い身体のラインが分かる。華奢な身体はそれだけで愛らしさと濃い色気を土方に感じさせた。黙っていたら肯定ととったのか沖田が話しを進めた。

「俺ができるおねがいの仕方っつったら一つしかないでしょう」
「………」
「こうやって、」

言いながら首に腕を回されてドキリとする。

「こうやって、ね、」

そう言われぐい、と少し首を沖田の方に引っ張られた。真っ直ぐに自分を見つめながらね、と言うのと同時に沖田が首を傾げその仕草があんまりにも可愛かったものだから土方は何にも言う事ができなかった。何やってたんだ、アホか、と、言ってやりたかったのに。

土方がそのまま黙っていると沖田も何も口にしないまま土方の足に自分の足を絡めてきた。柔らかな腿やふくらはぎの感触が伝わってき自然と身体が熱くなる。ピト、と股間までくっつけてこられビクッと土方の身体がはねた。沖田にもそれが分かったのかに、と、口の端を上げられ土方はバツが悪そうにまた視線を逸らす。沖田は面白そうに笑った後けれど次には驚くほどセクシーな表情をしてみせて。

「先生おねがい、進級さ、せ、て、」

そう言って少し目を伏せさせて唇を首筋に押し当ててきた。その唇の感触が気持ち良くて一瞬何もかも吹っ飛びそうになった。けれども土方は少し顔を赤らめて、しかし大きな声で怒鳴った。

「ばっ、」

一言目を口に出し同時にバッと沖田を突き放す。

「かじゃねーの!」

続けてそう言い赤くなった顔を少し腕で隠し顔を横に背けながら土方が言った。

「お前勉強すればできんだからンな事する暇ありゃ勉強しろよ!」
「……手っ取り早くて良いじゃないですかィ」
「………」

無言で睨みつけると沖田はふいと目線を逸らした。無理に視線を戻そうとはせずけれども土方は自分は真っ直ぐに沖田を見つめながら、言った。

「…ヤったのかよ」
「さぁ?」
「……総悟」
「……………」

黙り込む沖田の二の腕をぐ、と少し強く握る。一瞬顔を顰めたように見えたが気付いたら少し唇を尖らせてそっぽを向いていた。拗ねたようなその表情に土方は深く溜息を吐きパ、と腕を離しくるりと後ろを向いて少し肩を竦めてから、言った。

「まぁ…、お前が浮気とかする訳ねーよな」

行くぞ、と続けて言った後土方は心の中で苦笑しながら思った。

銀八と今まで一緒にいたと言う事に嫉妬はするけれども信用していない訳じゃない。沖田は、簡単に人を裏切るような子じゃない。…時間にルーズだし自分の言う事一つも聞きやしないしいつも何考えてるのか分からないけど、と、土方は付け足しけれどもだから悩むだけ無駄だ、と。


「なぁに…それ」

ぼそ、と呟いて全部を知っているような(と言うか自分の事を信用してくれているだけなのは分かってたけれども)土方の余裕な態度が少しむかついて、土方のくせに、と呟いた。悔しいから黙っておく事にする。本当は銀八先生に勉強を教えてもらっていただけだと言う事は。


END


え?訳が分からない?ハハハそうだね僕もだよ 

 がっこのんせいと 050202