もう沖田が大分小さい時から、土方と沖田が一緒に寝るのは当たり前の事になっていた。思い返してみればまだ沖田が5,6歳の頃は門下生全員で道場に雑魚寝していたがけれども真選組ができ、金回りもよくなってからは沖田も1人部屋が与えられてそこで寝るように言われた。しかしその日の晩沖田は眠れないと、枕を持って土方の部屋へ来たのだ。それからはもうずっと一緒に寝ていた。
幼い沖田は子供体温で冬は良い湯たんぽ代わりになったし夏は暑苦しくはあるがぎゅ、と抱きしめていると柔らかですべすべな肌が気持ち良くて心地よい眠りにつけたし土方もそれに対して文句をつけるような事はなかったけれども。

沖田ももう、12歳 だ。勿論大人とまでは言わないがけれども1人で寝れないほど小さな子供の年齢でもない。土方は1人で寝なさいと、そう言いたいのだがしかしすやすやと眠る沖田の可愛い寝顔を見るのが楽しみでついつい言うタイミングを逃してしまっていた。そんな、日が続いた時の事だった。



「……げっ、」

朝。
いつも通り沖田より早く起きた土方は少し伸びをして目を擦っていたのだが。しかし不意にどうも太もも辺りに湿った感触があり布団を捲ってみた。まさかおねしょでもしたのかと少し笑いながら。けれども捲って見えたのは大分濁りのある白い液体。それは正しく男の、証 精液だった。
まさか自分が夢精したのかと一瞬冷や汗がでたがしかし自分の着物は濡れていない。ホッと息を吐くのと同時にと言う事は、と、土方は思った。


「ん〜〜なにひじかたさん、…さむい」

布団を捲られその寒さにか沖田が珍しく1人で起きてき目を擦りながら言った。そして沖田も布団が濡れている事に気付いたらしく目をパチパチとさせる。

「……」
「そっかそっかそうだよなー!お前ももうそんな年頃かァ」

そのまま黙り込む沖田に土方はうんうん、と頷きながらそう言った。思わずげっ、と声を出してしまったが沖田の成長が嬉しくないはずがない。そうだ、ずっと一緒に寝ているのだから今まで沖田が夢精なんてした事がないのは土方が一番よく知っている。つまり、初めての射精、精通を迎えたのだ。
沖田の気持ちを考えれば精液を身内に見られて恥ずかしい思いをしているかもしれなくて喜ぶのは可哀想なのかもしれないがしかしいつも感情を面に出そうとしない沖田の恥ずかしがる顔が見れるのは少々悪趣味だと自分でも思ったが楽しみだ。しかし沖田の顔を見てみると眉に皺を寄せていた。そしてこてん、と首を傾げながら言ったのだ。

「なにこれ」
「……ん?」

それから土方を蔑むように見て言った。

「…やだ土方さん、もしかして漏らしたんですかィ?いい年して…」
「いやちっげぇえよ!ってゆーか明らかに湿ってんのはお前の着物だろ!」
「…あ、本当だ…え、俺もしかして…」
「や、違うから!」

もらしたのか…!と顔を青くする沖田に突っ込む。じゃあ何なんだ、と見上げてくる沖田にまさかとは思いながら、土方は聞いた。

「お前…もしかして夢精もしんねぇの…?」
「むせい…?」
「………」

また首を傾げ眉を寄せる沖田に土方は愕然と、した。
いやけれどもと、土方は思う。できるだけ下世話な話題から遠ざけるように育ててきたのは土方、だ。天使のように愛らしい顔に俗な事を知らせるのにどうしても抵抗があってエロ雑誌にだって少しでもそういう気のあるテレビ番組にだって門下生がするワイ談にだって沖田を近づけさせないようにしていた。その結果清々しいほどウブに育ってしまっていたらしい。12歳になって夢精もしらないとは…と、土方は全く珍しい物でも見るかのように沖田を見た。

「何ですかィむせいって」
「いやっ、まあいいや。うん、知らなくて良いよお前は」
「やだ!気になるじゃないですかィ」
「……いいんだって、知らなくて」

今更夢精について説明するのも不粋な気がして土方は話をこれで終わらせようとする。どうせいつかは知る事なのだけれどもどうも自分で教えるのは抵抗があった。今まだ性について何も知らない無垢な沖田を、自分の手で黒く染めるのはどうも、気が引けたのだ。けれども沖田だってまるで知らないのがおかしいかのような言い方をされれば気にもなる。なんなんですかィ、と可愛らしい瞳で問うてきた。

「ねえ!なんですかィひじかたさん!」
「……」

ねぇ!と一際高い声で言った沖田の目から土方は視線を逸らしてそ知らぬ振りをする。それを白けた目で見た後沖田はくると身体を反対方向に向けて言った。

「……教えてくれないなら近藤さんに聞いてこよ〜」
「わわわっ、待て!」

そう言った沖田に慌てたように土方が言った。何でもすぐに近藤に聞きに行くのは、沖田の悪い癖だ。いやきっと、土方が言いたくないような事は近藤にとっても言いたくないような事で、近藤に言わせるくらいなら自分が言った方がましだと言う土方の考えをよみとっていて、その上で近藤に聞きに行くと、言っているのだろうけれど。いつもは鈍いくせにそんなところだけ聡い沖田に全く可愛くないガキだと土方は思う。

「じゃあ教えてくだせぇよ」
「……えーとさァ、だから…」

ニコ、と笑いながら聞いてくる沖田にハァ、と溜息を吐いて土方は諦めた。大体沖田は気になった事は絶対にどんな手を使ってでも、知る主義だ。隠す事の方が、無理なのだ。
仕方が無いと思い教えてやろうとして、けれども考えてみるとどう説明したら分かりやすいのか分からず土方は頭を捻った。うーん、と唸りながら考えて考えて、やはりこういうモノは身体に反応させるのが一番かと思い、土方が言った。

「…お前さァ、女見たりすっとこう、…むらむらっとする事、ねぇ?」
「土方さんじゃないんだから。ないでさァ」

さり気なく自分を見下されて土方はむ、とし少し叫ぶように言う。

「嘘吐くなよ!お前ンくらいの年頃は頭ん中やらしい事でいっぱいだろう!」
「何決め付けてんですかィ」

熱くなる土方とは対照的に何処までも冷めている沖田の言葉に土方はまた可愛くないと心の中で呟いて、少し苛立たしげに言った。

「ああもう…だから例えばさ〜…」

そう言いながら土方は机の後ろに隠してあるエロ本を取り出す。そして適当なページを開き沖田に見せた。そのページには色っぽい姉ちゃんが四つん這いになって下着から胸をはみ出させている写真が載っていた。
沖田は少しの間それをじ、と見てけれども冷めたように言った。

「それが…?」

冷静な沖田に内心赤くなって勃起する沖田を期待していた土方は面白くなくて。

「何か感じねぇ?」
「……ハシタナイ」
「ああ、…そうだな」
「そういうの好み?」
「べ、べつに…」
「ふうん」

冷たく言う沖田に焦らせてやるつもりが反対に自分が焦らされてあげく自分がエロ本を所持していたと言う恥を知られアレこれ何で俺こんなに損しないといけないんだと土方は急にやるせなくなる。
しかし冷たい視線を送ってくる沖田に自分は役に立つのだと言う事を教えたいと言う妙な見栄が土方の中に出てきた。

「えーと、…じゃあ…、夕べ何考えて寝た?」
「そんなん覚えてないでさァ…あぁでも、…」
「なになに?」

興味津々と言った感じで身を乗り出してきた土方を訝しそうに見ながら沖田があっさりと言った。

「土方さんの腕の中気持ち良いなぁって…思ってた」
「ああ…そう…」

そういうのじゃなくてさァと心の中で思いながら、けれどもそんな可愛い事を思いながら寝てたのか!と土方は少し嬉しく思う。しかし面白くなさそうに沖田が土方を見てる事に気付き何か言おうとする前に沖田に口を開かれた。

「え、だから夢精ってなんなんですかィなんかあんたさっきから話題逸らそうとしてません?」
「…関連してる話のはずなんだがな」

お前が型通りじゃないから悪いんだよ、と呟いて他にどう教えれば良いのかと悩み土方は頭をかきあげる。うーん、とまた唸ってけれども一つ良い案が出てき土方が言った。

「あ!じゃあ、夢!お前夢何見た?」
「ええー…んー、どんなんだったかなァ…。忘れたけど、…土方さんが出てた気がしまさァ」
「……」

内心また俺かよ!と突っ込みを入れ土方ははぁとついに溜息を吐いた。

いやそれよりも。ふ、と気になったのは何で沖田が女の身体に反応しなかったのかと言う事、だ。 大体夢精と言うのは性的な欲望を持っているからするもので、女の身体に反応しないのはおかしいと、土方は思う。先程エロ本を見せた時の沖田は振りとは思えないほど冷静で、とても性的な欲望を持っているようには見えなかった。まだ小さい子供が女の身体を見て何にも思わないのは普通だが夢精までしておいて女の身体を見て何の反応も示さないのは道理としておかしいのだ。
そこでふ、と土方は気付く。俺の腕の中が気持ち良いと思いながら寝て、そして俺の夢を見て夢精を、した。確実に、自分の事を考えながら寝て、そして寝ながらも考えて、いた。

「(やっべコイツもしかして…)」

俺の事好きなんでは…!
そう思ってけれども流石にそれは自分の欲目が多分に含まれているなとも、思った。自分の希望も可也含まれていると。しかし、だ。健全な12歳の少年が女の身体に反応しないのはインポかホモか、だ。勿論精を出したのだからインポなはずがない。ならば残るのは。

「……」
「んで結局夢精ってな、っ」
「ちょ、黙れ」

しつこくも聞いてくる沖田の口を手のひらでポン、と塞ぎ土方はにやけてくる口元を隠す為自分の口も手の平で覆い目線を沖田から逸らしつつそう言った。

ずっと、土方は沖田が好きだったのだ。けれども沖田は普通の男の子で、ちゃんと女を愛して幸せな人生を歩んでいって欲しいからその想いは一生秘めておくつもりだった。沖田の事を恋愛の対象としても愛していたけれども大事な弟のような存在としてもちゃんと愛していたから。 しかし、だ。沖田が今、自分の事を好きなのかどうかは分からないがホモなら遠慮はいらない。他の男になんて、やるはずがない。

「……あと、6年経ったら教えてやるよ…」
「ええなんですかィそれ!6年って待てるはずないじゃないですかィ!何もったいぶってやんでィコノヤロー!コノヤロー!」

流石に12歳の子供に手を出すのは気が引けて、土方はそう言った。いや別に夢精の意味くらい今すぐ教えてやっても良いが少しずつじわじわと性についてのいろはを教えるより一気に教えて突き落とした方が、そそる。あと6年。あと6年。土方はそう思って自分の中に眠る欲望を抑えた。


END


沖田は真性ホモです!(こらこら)いや反応する沖田も可愛いよなと思いつつ…まぁ、ね 

 人への一歩 050306