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総悟、低くそう呼ばれて沖田は顔を上げた。 その声色から予測はできたが見上げて瞳に映った土方の顔はあまり機嫌の良さそうな顔ではなくて自然沖田の顔も仏頂面になる。着替えろ、一言そう言われて沖田はそれが何を指すのか分かり顔を顰めた。本当はもう少し前、見上げた土方が隊服を着ていた時点で何を言われるか、しなくてはいけないか、沖田には分かっていたのだけれども。 もう夜も8時を過ぎていて、沖田は私服に着替えてい風呂にまで入ってしまっているというのに。また隊服に着替えなくてはいけない、そんな事をしなくてはいけない時がどんな時か沖田は知っていた。 上からのお誘い、だ。 それが嫌で沖田はだるそうに言った。 「…俺も呼ばれてんですかァ」 「っつーか、用あんのはお前にだろ」 「………しってていかせるんですね」 「どうしようもないだろ」 「………」 冷たく言われて沖田は黙って目を伏せた。その沖田が妙に潮らしく見えて土方は少ししまったかと思うが今は自分も機嫌が悪い。自分のイライラを抑えるのに精一杯で沖田を慰める余裕はなかった。はやく着替えろともう一度きつい口調で言うと沖田はのろのろと起き上がりかけてあった隊服に手を伸ばした。 その時チラ、と何か言いたげに土方の方を見たが土方が睨むように見ていたからか何も言わずに沖田は小袖を脱いだ。 沖田は幕府の幹部のお偉方に、えらく気に入られている。事ある毎に酒の席に呼ばれてはやらしく触られたり下な話に付き合わされたりしていた。 回を増す事にタッチは濃く激しいものになっていき少し前、本当に犯されそうになった事もある。その時沖田はいつも腿や尻を触られている時、土方はちゃんと見ているはずなのに何にも言わなかったものだから、止めてくれなかったものだから、組の為に幹部の人がする事には何にも文句をつけてはいけないのかと思いならば別に犯されても良いかと、そう思って抵抗しなかったのだけれどもその選択は間違っていたらしい。 乳首をしつこく愛撫されて口を合わせられて汚らわしく舌で掘られてペニスに太い指で触れられて、いよいよペニスが挿入されると言うその時にタイミング良く部屋の扉が開かれて土方が現れたのだ。 沖田は皆が酒を呑んでいた部屋から大分離れた部屋に連れてこられていた。そのせいで土方は沖田を探し回る事になったのだろう。ハァハァと荒く息を乱していた。 上手い言い方で沖田をそいつから遠ざけて土方は沖田を外に連れ出してから怒鳴った。 もっと抵抗しろばかやろう そう怒鳴られてバシッと頭を叩かれてどうも理不尽な気がして沖田は何とも言えない感情を感じた。胸の中がもやもやとしてそれをどう吐き出して良いのか分からなくて沖田はボソッと呟いたのだ。 だって、土方さん、触られても何も言わなかったじゃないですかィ 言ってからハッとして上を見上げ見えた土方の、表情。それは記憶力のあまりない沖田の脳の中にけれどもしっかりと強く焼き付けられていた。あんな情けない土方の表情を見るのは初めてだった。土方だってどうしたら良いのか、分からないのだろう。自分だってそうだ。沖田だって、どうすれば良いのかなんて分からない。 けれども沖田にしてみれば触られたりするのと犯されるのとは同じくらい嫌な事で犯されるのを止めてくれるのならば触ってくるのも止めて欲しかった。 それはとても、我侭な事なのかもしれないけれども。 「よく来たね、総悟君」 「はぁ…どうも」 「……そうご」 「………」 渋々ながらも着替えて迎えに来ていた車に乗り沖田は宴会場まで来ていた。 挨拶をされて低い声で不機嫌に返事を返したらもう少し愛想良くしろと、土方にパシンと軽く背中を叩かれる。それになんでィと、拗ねたように思いながらも沖田はご無沙汰してますと慣れない愛想笑いをしながら言った。 その沖田の顔に劣情を抱いた男は沖田の腰に手を回しぐいと自分の方に引き寄せてきた。ピク、と、沖田の身体が強張る。そのまま酒の席まで連れて行かれそうになり沖田は土方の方を横目で見たけれども土方は無表情で自分を見つめていて沖田も表情を出すのを、やめた。 それからまた酒を注がされたりべたべたと触られたりしている沖田を見ながら酒を飲み土方は忌々しげに舌打ちをした。 セクハラをされる沖田を土方が快く思っているはずはなかったがけれども嫌だからと言って土方に何が、できたか。もしも沖田が、近藤や真選組がどうなっても良いと言うのならば撫で回すいやらしい手を掴んで捻って投げ飛ばして殴ってそれから沖田にも好きなだけ殴らせてやるけれども、沖田はそんな事を望んではいない。 けれども人間の心とは難しいもので強く望んでいないという事でもそれは表面上の事だけでもっと奥深いところまで探りを入れてみると色々な感情が出てくるのだ。一つの物事に答えが一つだけ、思う事が一つだけ、なんてあるはずがないのだから。つまり沖田は土方が自分の為に幹部の人を殴る事を望んでいない反面強く、それを希望してもいたのだ。そうだ確かに、沖田は幹部に楯突いて真選組がどうこうなるのは嫌だった。だからこそ沖田は何にも言わずにセクハラされるのを黙って耐えているのだから。 例えば土方が自分の為に幹部の人を殴ってしまったらなんて事を、と、沖田はそう思うだろうけれどもしかしそうなっていない今の状態では殴ってくれれば良いのに、この先何がどうなろうと良い、殴ってよ、とめてよ、そう思ってしまっている。本当に勝手なものだけれども全ての物事が綺麗にキッチリと白黒ついているはずがない。あやふやでどうしても、何をしても、納得がいかない事なんて腐るほどある。 後悔と言う言葉があるけれどもそれをする奴は沖田は馬鹿だと思っていた。後から悔しがるくらいなら常に慎重に物事をこなせと、そう思っていたし自分はそうしていた。けれどももし今土方にこいつを殴ってと、そう言ったら土方は何の躊躇いもなく殴ってくれるだろう。その一瞬は気分がスッとするかもしれない。しかしその後一生、後悔をするのだろうと、沖田は思う。 だから今のままで良い、そう思って沖田は目を閉じて迫りくる激しい不快感と吐き気に耐えた。 END |
| うん?何だかうまく纏まらなかった(いつもの事さ/さいあくだよお前) 当て仕舞 050401 |