土方が廊下を歩いていると縁側で体育座りをしながらボーッと庭を眺めている沖田を見つけた。声をかけようと近寄るが近寄ろうと足を踏み出した瞬間キシ、と廊下が軋む音がしその音に沖田がこちらを向く。そして土方を目に入れた沖田は身体をビクッと大きく撥ねさせた後立ち上がった。そのままプイっとそっぽを向くとぱたぱたと高い足音を立てて土方のいる方とは反対の方向へ走って行ってしまったのだ。



「………なんで!?」

残された土方は沖田のその不審な行動に2つ目を瞬かせる。
沖田に避けられるのは実はもう今日3回目の出来事だった。流石に偶然ではない、そう思い土方は少し寂しい気持ちになる。
けれどもなんで、と、土方はつい口に出してしまったが実は一つ心当たりがあった。昨日土方は初めて沖田を怒鳴りつけたのだ。イライラしていたのもあったがその時した沖田の悪戯がいつもの可愛い悪戯として流せれるようなものではなくて、つい大きな声で怒鳴ってしまった。そしてその後もくどくどと説教をしてしまったのだ。
ふ、と見た沖田の顔が唇を噛んで必死に涙を堪えているような顔でそれを見怒りが萎えもういい、そう言って頭を撫でてやったのだが沖田はぐいと涙を拭ってそのまま部屋へ帰って行ってしまった。明日になれば機嫌も直っているだろうと思っていたのだが、甘かったか。
そう思い土方は腕を組み壁に背をつけてハァと溜息を吐いた。
きっと怒られて拗ねてるのだろう、全く面倒な事になった、と。




「総悟」
「…っ!」

先ほど沖田が行った方向を自分も行き土方は沖田を探した。と言っても沖田が行く場所なんてこの道場内でもそうはない。自分の部屋か、近藤の部屋か、土方の部屋か。その3つだけだ。自分の部屋には行かないだろうと土方は思い残りの沖田の部屋をまず覗いてみる。ビンゴだった。沖田は部屋の隅でまたも体育座りをし背中を丸くさせていた。
袋の鼠だ、そう思い開いていた戸から入り込んでパタンと、戸を閉める。そうしてから土方は名前を呼んだ。逃げ場所などないのに沖田がせめて自分に近寄らないよう逃げようとするものだから土方はぐい、と腕を掴んでそのまま抱き上げる。暴れられたが強く押さえ込んでやった。

「いやっ、はなして…」

大きな声で沖田が言う。けれども勿論離す気のない土方は沖田の暴れがより一層激しくなっていくのに舌打ちをし押さえつける力を強くさせた。それに気付いた沖田はカプッと土方の肩に噛み付いた。

「イッ!!っ、コラ!総悟!」

一瞬力が緩むがなんとか持ち直し軽く怒鳴る。するとピクンと沖田が震え噛んでいたのを離し大人しくなった。ふぅ、と息を吐き土方は沖田を下ろしてやる。けれども逃げられないよう沖田の小さな肩を軽く押さえて、そうしてから土方は口を開いた。

「昨日俺が怒鳴ったから拗ねてんだろ?ん?」
「……」

つん、と唇を尖がらしている事から拗ねている、と言う事に確信を得た土方はそう聞いたのだが沖田は返事をしなかった。総悟、強くそう言ってやるとまた沖田がピクンと震えた。肩に触れている土方にはそれが強く伝わってきて何そんなにビビってんだと、思う。

「…すねてんじゃねぇもん」

ボソ、と沖田が言った。じゃあなんなんだよと土方が言えば沖田は一度チラリと土方の方を見て、下を向いた。かと思えばまた土方の顔を見て、次は視線を横にやる。顔色を窺がっているような沖田のその様子が珍しくて土方はじ、と見ていた。その視線を怒っているのだと勘違いした沖田は小さい声でボソ、と呟く。

「だってひじかたさんこわい…」
「え…」

出てきた言葉が余りに意外で土方は思わず呆気にとられた。だって沖田は、いつでも生意気で弱音一つ吐いた事がなくて、コイツに怖いものなんてきっとないんだろうなぁと土方は常々思っていたのだ。
けれども考えてみれば近藤も自分も勿論他の生徒達も、沖田には滅法甘かった。だから叱られるのなんて、初めての事だったのだろう。初めてされる説教が目付きが悪いとよく言われるガラの悪い男に、だったのではそれは、…怖いのかもしれない。そう思って土方は肩に置いていた手を頭に移しくしゃくしゃと優しく頭を撫でてやる。

「悪かったな、総悟」

あ、いや、自分は説教をしただけで何にも謝る事などないのだけれども。つい口を出てしまった言葉に心の中で突っ込みを入れるがしかし沖田の涙で滲んだ瞳や寄せられている眉を見るとどうにも自分が悪いような気がして土方はまぁいいかと、思った。


END


結局昔の話書いてるあおぎりさんの図(しらねーよもうしらねーよ)  

 イート 050507