それは土方が沖田の部屋の前を通り過ぎようと思った時の事だった。
別に沖田に用事がある訳ではなかった土方は自分の部屋へ帰るため、その道すがらある沖田の部屋の前を通っただけだったのだけれども。
その土方の足を止めるような声が沖田の部屋から聞こえてきたのだ。

ア、あァん、

と。
甲高いその声は悩ましげで、セクシュアルで、土方の身体がビクリとはねた。思わず立ち止まり土方は沖田の部屋の方を見てみる。扉は閉まっていて小さくしか聞こえなかったけれども確かに、聞こえた。エッチなテレビでも見てるのかと土方は思ったのだがもう一度、同じ声が聞こえてきそれが沖田の声だという事に気付く。

「(えっ、えぇえ…っ)」

心の中で驚きつつ土方はギュと、手に汗を握らせた。まさか、と、土方は思う。部屋の中に一人で、扉もきっちりと閉めて、いつもより高い声を上げながらする事と言えば。

「…………」

そこまで考えてからじ、と土方は扉を睨むように見た。
そして本当なら、何にもせずここを立ち去るべきなのだろうけれども。つい、好奇心からそっと、ドアを3センチほど開けてしまった。
隙間から見えたのは下半身を露にし自身を扱き快楽を貪っている沖田の姿、で。その沖田の色っぽさに土方の心拍数が一気に上昇する。けれどもそれと同時に沖田がオナニーをするなんて、と、土方は少し考えてしまった。

そりゃ、沖田はまだ若くて、性春真っ盛りで、オナニーだって、しない訳がないのだろうけれども。オナニーをしていたくらいでそんなに驚く事はないのだろうけれども。
土方は他の隊士達とは下ネタで盛り上がる事もあったが沖田とは一切そういう話をした事がなかった。思い返してみれば何年も一緒にいて、土方は沖田がどんな女が好みなのかすら知りやしなかったのだ。
だから土方の中で沖田はさながら中学生男子が学年のマドンナに対して思い描くイメージと同じく性への執着や欲望は一切ないと、思っていたのかも知れない。

しかしけれどもだからと言ってオナニーをする沖田に勿論嫌悪を抱く訳ではなく寧ろ女の裸体を見ているような気分になり土方は己の未熟さを恥じる。
そしてどうすれば良いのかを考えた。

「(え、こういう場合ってやっぱ見て見ぬふりだよな…)」

そう思ってけれどもしかし。この沖田を、このまま放っておくのは余りにもったいないと、土方は思ってしまった。だってあの色っぽい表情を見てみろと、土方は思う。綺麗なラインを描く顎に伝うあの汗を見ろ、と。そして自分で見てみて土方は思わずごくと固唾を飲み込んだ。
少し大胆に大きく開かれた足から覗くピンク色のペニスが堪らなく自分の劣情を煽っているのに土方は気付く。アッと、一際高い声を出した後ビクンっとはねた沖田の身体が土方には愛おしくて堪らなかった。

すぐに立ち退かなければいけない、そう思うのに身体が動かなかった。

そのまま土方はじ、と沖田を盗み見ていたのだけれども。
沖田の艶やかさに気を取られ土方の集中力は欠けていたのだろう。ガタッと、音を立ててしまったのだ。その音を敏感に察知した沖田がこちらを向く。逃げようとしたけれども沖田が土方を視界に入れる方が早くそして沖田が高い声を上げる方が早かった。

「いヤッ!ひじかたさんっ…!?」

そう言った後カァアと沖田の顔が真っ赤に染まった。近年見ない沖田のその反応にこんな時なのに土方はおぉ、と少し歓心してしまう。最近では並大抵の事では沖田が動じる事はなかったのだ。けれどもやはり羞恥心はあったのだろう顔を赤くしながら目に涙まで浮かべていた(いやこれは快楽からだったのだろうかとも土方は思ったが)。

沖田は恥ずかしさに何も言えずにいたようだったけれども暫く経ってから怒るように言ってきた。

「あっ、あんた常識ってモンしらねぇんですかィ…!普通入ってこねぇでしょ…ばか!」

今気付いたのか開きっぱなしだった足を閉じササッと着物で下肢を隠す沖田にそのいつもは憎たらしい悪態も今では可愛いとしか思えず土方は心の中で笑う。 

「あ、いや、…悪ィ」
「………」

しかし流石にオナニー中に人に入ってくるのは余りにモラルの無さ過ぎる行為だ。下手するとトラウマにだってなりかねない。そう思い素直に謝った。
その土方の滅多に見ない悪そうな顔にピクンと自身が反応したのを沖田は感じる。少し眉を寄せて考える風をしてそれから沖田はもうこうなったらヤケクソだ、そう思ってボソリと呟いた。

「土方さんの事考えてたから、幻覚かとおもった」
「え!?」

驚く土方に、沖田は目を逸らして膝を抱え込む。つい勢いで言ってしまったがどっと後悔が押し寄せてき沖田は顔を俯かせた。

「……おれのことかんがえながらシてたんですか…」
「そうですぜ。悪いですかィ?」

開き直ったような態度の沖田に土方は、困る。けれどもしかし、と、土方は思った。実のところ土方自身まだ若い頃、幼い沖田を想像し性欲を処理した事が、あった。不意にそれを思い出した土方はそれほど困る事ではないかと、思い直した。
それに沖田の裸体と艶っぽい声に今現在自身が反応してきてしまっている。困る事どころか嬉しいことではないかと、もう一度思い直した。


END


どうも創作意欲を沸かすようなネタが思い浮かばない
どうしたものか…  

 ウィッシュスト 050512