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沖田が人に懐く事はあまり、ない。土方はそう思っていたし実際そうであった事は間違いない、はずなのだけれども。 「あっ、また、」 思いがけず大きな声が出てしまい往来にいた土方は周りの人に不審な目で見られてしまった。バツが悪そうにチッと舌打ちすると何見てんだとガンをつける。それに集まっていた視線が外されるのを見てから土方はハァと溜息を吐き髪をかきあげた。 一緒に見廻りをしていた沖田が、いない。最近いつもそうだ。少し目を離すとフラフラと何処かへ行ってしまう。 「あのクソガキ…」 土方は今度は意識して小さめに呟いた。 沖田は最近知り合った銀髪の男にえらく懐いていた。土方はその男の名前すら知らなかったけれども見廻り中、自分の目を盗んで抜け出してはその男に会いに行っているのを、土方は知っていた。 "気"で分かる。何でもないような顔をして土方の所に戻ってきた沖田の回りには確かにあの男独特の"気"が纏っていた。何処行ってたんだと聞くと何処か行ってたのは俺じゃなくって土方さんでしょう、なんて可愛くない事を言いやがる。 しょーがねぇからいつも通り一人で見廻りしておこう、そうしている間に沖田は戻ってくる、今日こそ問い詰めてやろうかと土方は思った。そして今度からは首に縄でもつけて行こうと思いつく。けれどもその案はその図を想像してちょっと変態くせぇかもと思いすぐに廃止になったが。 「あっ!!」 そのまま暫く歩いているとふ、と土方の目に沖田と銀時の姿が飛び込んできた。今日は少し違うルートで見廻りをしたのだ。土方に見つからないだろうと安心して銀時と話し込んでいる沖田が、しっかりと土方の瞳に映った。またも一人の癖に大きな声を出してしまい周りの視線が自分に集まったが無視、だ。楽しそうに、銀時と一緒に話している沖田の姿を見てカッチーンとキたのが自分で分かった。 「総悟!!」 土方と沖田の間にはそこそこ距離があったのだけれども怒鳴ると沖田も土方に気付いたのかこちらを向いた。そして土方がツカツカと自分の方へ近寄って行くのを見てげ、と呟く。それから慌てた様子で銀時の後ろに隠れた。小さな沖田の体はそれですっぽりと隠れてしまったけれど勿論それで沖田の存在自体が消える訳ではない。それどころかその行動は土方には沖田が銀時を信用していて、そして自分を恐れているように見えて、余計に土方の怒りを煽らせる事になった。 ぐい、と沖田の手首を乱暴に掴み銀時の後ろから前へ出させると土方は怒鳴るように言う。 「おっまえ、いい加減にしとかねーとぶっ飛ばすぞ」 「うわ、こわーい。ぶっ飛ばすってよ、総悟君。こっちおいで」 けれどもそれに答えたのは銀時で。ギロ、と先ほど睨んだ時とは桁違いの迫力で銀時を睨む。しかしそれで銀時が引くはずもなく銀時は沖田の手首を掴んでいる土方の手首を掴んだ。必要以上に力が入れられているような気がして土方はより一層自分の機嫌が悪くなるのを感じた。 「おい、総悟。行くぞ」 「やっ、」 土方は銀時を無視し銀時に手首を掴まれているのも構わずぐい、と沖田の手首を引く。些か乱暴だったせいか沖田が小さく声を上げけれどもその声が自分を拒否するような内容だったのでム、ときた。ほぼ反射的に出てしまったものだろうからしょうがないと言うのは分かっているのだけれど。ぐ、と手首を掴む力を強めると沖田が顔を顰めた。それに気付いた銀時がまたも口を挟んでくる。 「やめてあげなよ、総悟君かわいそーじゃない。あっ、ホラ、手首に痕ついてる!」 「旦那ぁ…」 甘えるような声で、甘えるように銀時を見ながら、沖田が言った。沖田としては、ふざけて言っただけだったのだけれどもその滅多に聞いた事のない可愛げのある声が土方の勘に触った。 「あっ!」 感情の思うままに土方は銀時の手を振り払うとぐいぐいっ、と沖田を引っ張った。沖田が高い声を上げたけれども無視、だ。そしてそのままその場所から離れる。その間にも沖田がばいばい、と銀時に向けて手を振っているのが見えて土方の苛々を増させた。 痛いとか、離せとか、騒いでいた沖田が静かになってから落ち着いて考えてみると土方は自分がした事があんまりにも子供っぽかったのではないかと思い恥ずかしくなった。チラ、と沖田の方を見ると沖田は土方の方を見ていて、その表情が上目遣いで痛いのか少し眉が寄せられていて頬もうっすらとピンク色になっていて、とても、色っぽくて。少しドキンとしてしまった。けれどそれを誤魔化すようにぶっきらぼうに言う。 「お前帰ったら正座して反省文書けよ」 「……なにそれ、反省文って、…ちゅーがくせいじゃないんですぜィ。しかも正座?それって土方さんの趣味?」 「ウッセェ!!」 沖田に八つ当たりしている自分が全く恥ずかしいのだけれども先ほどの銀時と楽しく喋っている様子の沖田を思い出すと気分が悪かった。銀時と会っているという事は知っていたけれども、あそこまで沖田が銀時に心を開いているとは思いもしなかった。あの表情は自分にさえ、何年も一緒に暮らして漸く見せてくれた表情だったというのに。 土方は思った。 もう銀時に会わせてやるもんか、やっぱり明日からは首に縄をつけて見廻りに行こう と。 END |
| 土方がヘタレてる
アルファシンドローム 050729 |