どーん。花火が上がる音が聞こえて沖田は反射的にそちらを見た。たまやー、小さく呟くように言って祭りらしくなっていく雰囲気に自分の胸が少しずつ踊ってくるのが分かり沖田は笑った。妙にはしゃぎたい気分になったりして、慣れないその気分を沖田は持て余していたが嫌ではなかった。昔から、祭りは好きなのだ。
りんご飴にわたがしにいかやきに。普段は別に大して欲しくもないものが、この時はきらきらと輝いているように沖田には見えた。


「今年で何回目でしたっけ」
「ハァ?」
「土方さんと、祭り行くの」

あぁ、そうだな少し考える仕草をして10回目くらいじゃねーのと適当に答える土方の言葉を聞きながらやはり10回目か、と、逸る胸を沈まらせるため沖田は息を深く吐いた。そして10年前の事を、思い出す。
黙り込む沖田に何だコイツ、思いながらけれども土方も過去に思いを巡らさせていた。周りを見ていると沖田と一緒に祭りに行った時の思い出が次々と頭に浮かんでくるのだ。珍しくあれ欲しいだのこれ欲しいだのと欲求を口にされた時の事とか、声を立てて笑う子供らしい一面を見せらた時の事とか、けれどももう12,3才になる頃には色気がついてきだして浴衣姿に少し劣情を抱いたりした事とか、そして夏祭りの事で言えば1番昔、10年前の出来事を思い出して土方はくっ、と笑った。
それに沖田が不思議そうに自分を見るのを見て、土方は口を開く。

「お前が道場に来て初めて夏祭りに行くって時、お前すっげ駄々こねたの覚えてる?」
「…!」
「俺は女と約束があったんだけど土方さんと一緒が良い一緒じゃなきゃヤだって、泣いたんだぜおめぇ」
「…」
「あの頃はお前も素直で可愛かったよなァ」
「…覚えてまさァ」

言った沖田の言葉が意外だったのか、土方は沖田の方を見て一瞬瞳を大きく開かせて、それから少し間を置いてへぇと呟くように言った。

「あの時、ぜってぇ土方さん女の方とるんだろーなーって、思って、言ってたんですぜィ」
「ハァ?そなの?」
「だから俺と一緒に行くって言った時、すっげ嬉しかった」
「あ、…そなの」

思い出したのか少し柔らかな表情で言う沖田に土方はほんの少しドキリとした。沖田はいつも本当に可愛くない口ばかりきいて、頑なで、生意気なのだけれども時々狙ってんじゃねぇのかと言うくらい絶妙なタイミングで弱いところを見せたりして、土方の心を鷲づかみにするのだ。続いて潮らしく瞳を伏せる沖田を見て素直で可愛いじゃんと、土方は思った。

「土方さんって、昔から女切らしたこと無かったけど祭りとか、クリスマスとか、正月とか、誕生日とか、そーゆー時はいつも俺と一緒にいてくれやしたよね」
「…別にお前と一緒にいたって訳じゃ、ねーけど」
「だから女にフラれるんでさァ。クリスマスに他のとこ行ってる男なんて、いくらツラ良くても願い下げですもんね」
「お前なぁ…」

少し可愛いと思えばすぐこれだ、土方は言葉と共に溜息を吐く。

「でも」

小さく言って沖田はそこで唇を閉じた。続きは?そう思った土方に沖田はそっと寄り添うと腕を絡めてきた。柔らかな腕が当たりさらさらの髪が舞って甘い香りが漂い土方の鼻を擽る。でも、もう一度沖田が言って土方と視線を合わさせてきた。

「俺を恋人にすれば、もうフラれる事ねぇですぜィ」
「……はい!?」
「祭りもクリスマスも正月も誕生日も俺と過ごすんだから」

ね、どう?
あっさりと、告白してきた沖田に土方の思考が停止する。ね、どう?じゃ、ねーだろ何気軽に勧めてんだオイ、思いながら土方は戸惑っていた。戸惑っいてて、上手く自分の感情を把握できなかったからすぐには気付かなかった。
始めは自分は困っていると、思っていたのだ。けれどもすぐに気付いた。違う、この感情は喜び だ、と。だってそりゃ土方だって大事なイベントの日には好きな人と一緒にいたいに決まっている。自然と、一番大切な奴のところにいたのだろう。

「…しょーがねーから、これからも一緒に過ごしてやるよ…」
「ありがとごぜぇやす」

土方の精一杯の答えに沖田は笑った。

そしてまた10年前の事を思い出す。
10年前のあの日、祭りに一緒に行ってと駄々をこねた、あの日。断られたら自分の気持ちをもみ消そうと、思ったていたのだ。でも良いよって、言ってもらえたら、10年後に告白をしようと、決めていた。

「(……やっと、手に入った)」

りんご飴よりわたがしよりいかやきより何より輝いていて、手に入れたかったものが。


END


だからなんだってんだって話ですよね(コルァ)  

 祭り 050903