がつんっと大きな音が嫌に近くで聞こえたのと額に激痛が走ったのは全く同時だった。一瞬遅れて視界に見慣れた壁が入り髪を掴まれている感触を感じ、壁に頭をたたきつけられたのだと理解する。いってぇと呟きながらきっと瘤か青痰ができているだろう額に触れようとしたがその手首を土方に掴まえられた。そして乱暴に髪を離されて次は体を壁にたたきつけられる。

「ちょっ、ひじかたさ、」
「喋んな」

低い声で土方が言った。ひくりと、沖田の体がはねる。
潰れてしまうのではないかというくらい手首を強く壁に押し付けられて沖田は瞳を閉じて震えていた。荒く前髪を上げられ腫れた額を露にされる。土方はそこを少し舐めると歯をたてた。いたい、小さな声で沖田が言ったが無視される。
沖田は痛みに顔を歪めながら一瞬だけ、土方の顔を上目で見てみて血の気が引いた。今の土方の顔は、人を斬る時にする表情と全く違いがなかった。時々土方は、こういう表情で沖田とセックスをするのを望む。その時の土方は殴るのだって蹴るのだって沖田がどれだけ傷つくのだって構いやしないのだ。
沖田は土方が怖くて、逃げようとした。出せる全ての力で手を振り払いダッと走る。しかしすぐに土方に足をひっかけられて無様に畳に顔をぶつける事になった。その上そのまま後頭部に足を乗せられ踏みつけられる。息がしにくかったし何より顔が畳に擦れて痛かった。

「や、」

土方は一際強く擦りつけるように足を動かすところんと、転がし沖田を仰向きにさせた。沖田は怯えたように土方を見上げている。その沖田の腹を、土方は思い切り、蹴っ飛ばしてやった。

「うぇっ、げ、っ…」

けほけほと咳き込みながら腹を押さえて蹲る沖田。鳩尾に近いところを蹴られたのだろうか、それとも手加減してくれなかったのだろうか、ひどい吐き気がした。

「い、ったァ、ちょっ」

だってだって、ほんの少し抵抗しただけなのに。こんなに乱暴な事をしなくたって、結局自分の、土方の、思い通りになる事なんて分かりきっている事実のはずなのに。
ただ冷徹に、冷たく自分を見下ろしてくる土方の瞳と目が合って沖田は怖さに身が竦むのを感じた。
上目に土方を見ていたら睨んでいるとでも思われたのだろうか、もう一度腹を蹴られて沖田は今度こそ何も喋れなくなる。
苦痛に眉を寄せていると髪を掴まれて顔を無理に上げられた。体に全く力が入らなくて吊り下げられている状態になってしまい引っ張られている髪が余計に痛い。思わず生理的な涙が滲んだ。

「ひじかたさん…」

我慢仕切れなくて言葉と同時にぽろりと涙を零したらそれが嫌だったのか土方が眉を顰めさせた。そして頬を酷く強く張られる。咄嗟に歯を食いしばろうとしたけれども遅く口の中を噛んでしまい血の味が広がった。けれども沖田は涙を堪える事ができず続けてぽたぽたと雫を静かに落とす。するともう一度、さきほどのビンタで赤く腫れている頬をぶたれてしまった。

「うっとうしい」
「や、…」

また手が振り上げられたのが分かってもうぶたれないようにと反射的に沖田は頬を手の平で抑える。土方がイラっとしたのが空気で伝わってきたけれどもその手を自分で離す事はできなかった。しかし土方に無理に手を離されて今度は殴られる。勢いで畳に体を叩きつけられた。頬がずきずきと痛み沖田は瞳を閉じた。



沖田には、土方がするこの行為を我慢できる時とできない時があった。大抵は堪えられるのだけれどもどうしても、どうしてもされたくない時だって、あるのだ。勿論沖田のそのあんまりにも小さな願いは潰されどれだけいやだと言っても、どれだけ懇願しても、無理にひどく犯されるのだけれども。
もういやだ、沖田はいつもそう思うのだけれども結局土方から離れることなどできなくて今のこの現状を甘んじているのはやはり付き合うのにはメリットとデメリットがあってこのあんまりにも酷いデメリットに敵うメリットが確かに存在しているからだろうと思う。だって、今だって、これから何をされるのか分からない土方への恐怖に怯えながら、瞳を閉じれば優しい時の土方が浮かんできてそれだけで沖田を幸せにさせてくれる。
自分には土方が、必要だ。
酷い事をされても一緒にいる理由はそれだけで良い。沖田にはそれだけで十分だった。
それに。

瞳を開けると土方の獰猛な瞳と視線が合い沖田はゾクリとした。
さきほどどうしても、土方のこの行為を我慢できない時もあると書いたが逆にこんな土方と交わっていたいと思う時も、あるのだ。所詮自分も同類だ。沖田は思った。そして土方と同類に生まれついた事を霧消に誰かに感謝したくなった。


END


リクエストの蹴ったり壁に頭ぶつけさせたりする土方さんです
即書いちゃいましたよ!(お前って奴は…!)
しかし、ちょっと、甘い、ですかね…。Sになりきれなくてすいません… 

 傷だらけの使 050923