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パチンコで大負けして自棄になって酒を飲んでいたら気付いた時には夜ももう更けていた。親父、ツケで。いつものようにそう言ってちょっ、銀さんまた!?叫ぶ店主の声を聞きながら店を出ればもう外は少し寒くて有り金尽きてただでさえ寒い(懐が)身には少し辛い。こういう時は独り身が沁みるなぁと親父くさい事を思いながら酔っているせいで少しふらつきつつ帰路を歩く。 そんな中、やはり酔っているせいで周りがあまり見えていなかったというのにそれはやけに銀時の目に付いた。 道路の端に座り込んでいる沖田の、姿が。 「あっれ…」 見間違いかと、銀時は一瞬思った。しかし目を凝らして良く見てみて、端整な顔立ちの少年にやはり間違いないと、思う。だってこんな美少年、ごろごろいてもらっては困る。 「ねー、…ちょっと君」 「……」 喋りかけるが無反応で銀時はぽりぽりと頭をかいた。視線はこちらを見ておらず下に向いていたけれども瞳はしっかりと開かれていて寝ている訳ではないだろう。ってことはシカト!?思いついた考えに銀時はふるふると頭を振ってその考えを消す。そして懲りずにもう一度話しかけた。 「ねー、こら、ちょっと」 「っるせぇ」 喋ったかと思ったら間、髪入れずにパンチが飛んできたものだから銀時は咄嗟にそれを避ける。手加減しなかった訳ではないけれども常人では避けられないくらいの速さで繰り出したそれを避けられ沖田は少し吃驚したように目を開いて銀時を視界に入れて、あ、と、呟いた。そしてちょっとだけ微笑んだ、ように銀時には見えた。 「なんだ、旦那ですかィ…」 「そーですよ銀さんですよ危ないコトしないでくれるー?」 「すいやせん。ナンパかと思いやして…」 さっきからうるせぇんでさァ、言うと沖田は疲れたように溜息を吐いた。 項垂れる沖田を見ながら可哀想にとも思ったがそりゃしょうがないだろうとも、銀時は思う。こんな夜中に、こんなトコで、こんな可愛い子が1人で座っていればナンパしたくもなるだろうと。鴨が葱しょって座っているようなものだ。声をかけない方が男としてどうかしているとすら銀時は思った。もうちょっと用心した方が良いんじゃないかなぁと思いながら銀時は沖田と向かい合わせになるようにしゃがみ込む。それに沖田は嫌そうに銀時を見たけれども銀時は気にしない。 「どーしたの、もう帰る時間はとっくに過ぎてるんじゃないの」 「…やめてくだせぇよ子供あつかい」 不機嫌そうに沖田が言うものだから銀時は苦笑をする。そう言ってむくれる姿は子供以外の何者でもないんだけれどもなと思いながらそれは口に出さないでおいた。沖田がより不機嫌になるのは分かりきっている。 「何?お仕事?誰か張ってんの?」 「……」 答えが分かっていて銀時は聞いた。だって今の沖田の格好は真選組の隊服を着ておらず小袖姿(随分幼く見えると銀時は思った)で勿論帯刀もしていない。仕事中でないのは一目瞭然だ。悪い事は自分の口で言わせるのが良い躾になるとかなんとかというまさか役に立つとは思わなかった知識を使ってみたのだ。違いまさァ、小さい声で沖田が言った。 「じゃあ早く帰りなさい。送ってってあげるよ」 「いい」 言って合わせていた視線を沖田は逸らす。その沖田の様子がどこか構って欲しそうな感じなのを銀時は何の根拠もなかったのだけれども感じ取った。 「こんなトコ居たらサツに補導されちゃうよ」 「…俺がそのサツなんですけどねィ」 「あ、…そーだったっけ」 とりあえず危ないから、ね、言うと手首を引っつかんで無理に立たせる。すると沖田もきっとこのままずっとここいるつもりと言う訳ではなかったのだろう(先ほど銀時が感じた通り誰かに構って欲しかっただけだったのかもしれない)、抵抗せず素直に立ちそのまま仕草だけは渋々といった様子で銀時の後をついてきた。 そのまま自宅まで沖田を連れて帰った銀時はリビングの電気をつけて見えたぐっちゃぐちゃの部屋にもう少し綺麗にしておけば良かったなんてガラにもない事を思った。だってリビングに置きっ放しだった今日取り込んだ洗濯物の中に神楽の下着もあってこんなに慌てたのはこの間頼んだチョコパフェにチョコレートシロップがかかってなかった時以来だぞあんのクソガキと銀時は今日は新八と一緒に志村道場の方へ泊まりに行っている神楽を恨む。 これ神楽のだから!これ神楽のだから!ほらあの居候してるピンクの髪の馬鹿強い異星人の!ね!そいつのだから!とかなり焦って言い訳じみた事を言ってしまった。はぁ、と大分どうでも良さそうに答える沖田の様子が銀時の志気を下げさせる。 「銀時さんの家にいるって電話、おうちにしとかなくていいの?」 「いい」 「……でもさぁ、」 「いいんだってば」 「…」 余計なお世話だろうけれども心配してるだろう土方や近藤の事を思い(あぁ俺って何て良い人だろうと銀時は思う)銀時は言ったのだけれども沖田の返事は素っ気無いものだった。 「じゃあ居場所は伝えなくていいじゃん。電話だけ…、ね?」 「すぐ逆探知されてここまできてぶん殴られるに決まってまさァ」 「うわぁ、ぶん殴るんだ、多串くんて…」 「うん」 「可愛い子にひどいことするねぇ」 言ったら沖田が不思議そうな顔をして、それから違う違うと言った。 「殴られるのは旦那でさ」 「…あぁ」 妙に納得してしまった自分がおかしくて銀時は小さく笑った。 それから2人とも黙ってしまって先ほどつけたテレビの音だけが静かな空間に流れる。銀時は何となく緊張してしまっていて(だってあの可愛い沖田君が!自分の家にいて!隣にいて!自分がいつも寝そべっているソファにちょこんと座っているんだもの!と銀時は興奮気味に思う)少し手持ち無沙汰になってしまう。これ久しぶりの感覚初めて好きな女の子と一緒に過ごした時の感覚と銀時はばくばくと心臓を鳴らしていた。 けれども急に沖田が小さく笑ったかと思うとそのまま、小さな笑みを浮かべたまま、銀時の方を見てポツリと言った。 「旦那って優しいから、俺甘えてんのかも」 「え?」 沖田のその言葉に沖田の自分への態度は甘えているというのとは程遠い気がして銀時は不思議そうな顔をする。 「本当は、旦那がくるのあそこで待ってたんでさァ」 「マジで?」 それを聞いて今夜始めて沖田の瞳に自分が入った時、小さく笑ったように見えたのは勘違いじゃなかったのかと思った。もしかして脈アリ?頑張って優しくした甲斐あったんじゃねぇのと年甲斐もなく心が逸る。 「今屯所、遊女達いっぱいきてんの」 「そうなの?」 「うん、なんかちょっと俺、居づらくて…」 「どうして?」 「…ちょっと」 沖田の年齢はいくつなのか知らないけれども見た目から察するに16,7才頃で十分女と一緒にいて楽しめれる年齢ではないかと、銀時は思うのだけれども違うらしい。違うどころか「居づらい」と言うほど嫌だというのだ。 そこであ、と、銀時は気付いてしまった。逸っていた心が一気に冷める。全く昔から勘だけは良くてそれを自慢にした事もあるが今こんな時に働いて欲しくなかった。あーあ、つまんねぇの、銀時は思ってけれどもあんまりにも悲しい顔をする沖田が可哀想で、このままにしておけれなくて、背中を押してやる事に、した。大分勿体無いねぇとかなんとか思いながら。 「多串君、見るのがヤなんでしょ」 「え、あ、…う、ん」 ずばり指摘されて沖田は吃驚したように瞳を瞠らせる。それから少しバツが悪そうに瞳を伏せて黙った。 「多串君って、女の扱い方うまそーだもんね。モテるでしょ」 「…うん」 どんどん元気がなくなっていく沖田を見ながら銀時ははぁと心の中で溜息を吐く。 結局、この子の目には土方しか映ってないのだ。視線を落としてふるふると震え(ているように銀時には見えた)今にも泣き出しそう(に銀時には見えた)な沖田を見て、しょぼくれたいのは俺だと、銀時は思う。だって土方だって沖田に思いを寄せているのは銀時が見たって分かった。沖田の思いは近い内にきっと報われる、けれども。 きっと奪いとってしまう事は簡単だと、銀時は思う。傷ついた心に漬け込んで優しくしてやってたっぷり甘えさせてやって傷を舐めてやって、そうすれば土方への思いを諦めさせる事はできるかも、しれない。その後で自分へ気持ちが向くようにしてやればいい。そうする事は今の銀時には容易いことだった。けれども。 「でも俺から見てみると、沖田君といる時が1番、楽しそうだけど」 「…うそでぃ」 「本当だよ」 「……」 黙る沖田に銀時は笑ってみせた。 「電話、してみたら?」 「……うん」 ここで拒否をしたら、力ずくでも奪う、そう思って言ったのだけれども沖田は拒否しなかった。銀時は少しだけ笑う。すくっと立ち上がると沖田はもう一度、今度は力強く言った。 「でんわ、してみまさァ」 「うん」 ポケットに突っ込んでいた携帯電話を探ってとって沖田は土方の携帯の電話番号を一つ一つドキドキ鳴る心臓を抑えながら、押す。そしてプルルプルルと鳴る音を聞きながら目を閉じた。 『何処いんだてめぇえ!!』 プツと電話の出る音が聞こえたかと思ったらすぐさま土方の怒鳴り声が聞こえてきて女と一緒にいたから体裁の悪そうに出る土方を予測していた沖田は吃驚した。今土方は後ろめたさでいっぱいのはずなのに何えばってんだ逆ギレかと、沖田は思う。 「え、…どこって…」 『さっきからずっと探してんだぞコラ!!』 「…なんで?」 『ハァ!?おめぇがいねぇからに決まってんだろーが!!』 「だって、今屯所遊女いっぱい来てんじゃん綺麗な女達いっぱいいやすぜもったいねぇ」 『そんなんどうでもいいんだよそれよりおめぇ今何時だと思ってんだ!?ガキが遅くまで遊んでんじゃねぇよ今どこいるんだ!!』 「……え、と…駅前の、パチンコの近く?」 『1人か!?』 「……ひとり」 『行くから待ってろ!殴られんの覚悟しとけよてめぇ!!』 そう言うと一方的にぶちと切られてしまった。 けれどもずっと探しててくれたのかと、そう思うと沖田は自然と笑みを浮かべていた。本当に幸せそうな、笑顔。その表情を見て銀時は苦笑しかする事ができなかった。 「電話してみてよかった」 「…」 「旦那、ありがと」 「…」 本当に嬉しそうに言われて、銀時は複雑な気分になる。しかしそう言ってちゅ、と、沖田がほっぺにチュウをしてくれたものだから、少しは報われたかなと、思った。 ぱたぱた、ガチャ、バタン、沖田が家から出て行く音を聞きながら銀時はあーあ、そう言ってまだ沖田の香りと温もりがするソファに横になった。 END |
| ぐだぐだぐだぐだいっぱいいらない事を書いちゃった感があります
反省してますいや本当… 一時の青い鳥 050930 |