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ぴと、と、沖田の細い指が土方の首筋を這った。土方は黙ったままその手をとると有無を言わせずぐいと沖田の太股の上に押し付ける。そしてそのまま動かせないようにぎゅ、と強く握った。横で沖田が不服そうな顔をしているの分かる。そして目の前の人物が驚いているのも。けれども土方は何にもなかったかのように話を続けた。 しかし沖田が土方に寄り添い甘えるように名前を呼んで体を密着させてきた。沖田、離れなさい、この間そう余りに事務的に言ったら酷い拗ね方をされたものだから土方は小さな声で総悟、咎めるように言ってパシンと太股を叩く。土方は溜息を吐きたくなるのを必死で堪えていた。今ここで自分が溜息を吐けば、終わりだ。 沖田は、人目というものを全く気にしない。 今接待の途中だというのに土方に欲を多いに含ませて触れてきているのが良い証拠だ。 土方は諌めるが無駄だった。沖田のズボンの上からでも分かる形の良い足が太股に乗せられて体と体を蟻一匹入る隙間もないほどにくっつけられて首に腕が回されて。けれどもまだ土方は何でもないような顔をして話を続けた。先方は吃驚して沖田を指差してどういう関係なのですかと聞きたがっているように見えたけれども土方はこの現状が特に特別変わった事ではないような顔をして話を続けた。ここで自分が驚いてしまったら、負けだ。 「総悟!!」 先方がその場を後にし気配が完全に消え去った途端、土方は我慢していたのを全て発散させるくらいの大声で怒鳴った。すましている綺麗な横っ面をぶん殴ってやりたいのを寸でのところで我慢する。 「何のつもりなんだよテメェはよ」 「……」 沖田は黙っていた。黙ったまま、また自分に触れてこようとしてきたものだから土方は次はその手を思い切り叩き落してやる。泣きそうに顔を歪める沖田にも同情の気持ちは湧いてこなかった。いい加減こちらだってキレる。 沖田は目を伏せて長い睫毛を震わせて少しだけ眉を寄せた。 「だって接待してる土方さんって土方さんじゃねぇみてぇなんだもん」 「…」 「だから、触って土方さんかどーか確かめてんでさァ」 沖田が言い終わった途端ハァアア、と土方はとても深い溜息を吐く。意味が分からない、苛立たしげにそう呟いてそんな事しなくていいんだよと怒鳴るように言った。沖田は寂しそうな顔をする。 本当は、土方には少し意味が分かっていた。大人の顔をして話す土方に、いつもと違う土方に、沖田は自分が置いていかれているような不安を感じたのだのだろう。土方は何となくそれが分かったけれども意味は分かってもあの行動を許すことはできなかった。 「全くはしたねぇ」 「……」 「もう2度とてめぇを接待に連れていかねぇ」 こんな事はもう幾度目かでそれでも将来の為にと、連れて行ってやっていたのに懲りる様子のない沖田に土方はそう言った。本当に、仕事にならない。冷たくそう言って突き放してやってしっかりと反省するまで沖田を同伴させるのはよそうと、思う。 「そっちの方がこっちも有難いですねィ」 けれども沖田は反省するどころかシラッとした顔でそうのたまりやがったのだ。 いよいよムッカとキた土方はあぁそうかよそう言ってじゃあもうどうなったって知らねぇ、そう思って踵を返してそこを後にした。 END |
| 我侭な唇 051013 |