好きと言う感情を抱かれる事に沖田は慣れていた。
だからと言って自分に寄せられる想いの一つ一つを軽く扱っているつもりはないけれども正直鬱陶しいと思う事も少なくなかった。兎に角厄介なのだ、恋愛と言うものは。
想いは積み重なるほどに自身を強くさせそれ故に暴走し爆発する。その対象が物や自分の近しい人になら良いのだけれども好きな相手へあたる場合もあるのだから本当に、堪ったものではない。全く感情ほど怖いものはないと、沖田は思っていた。
いやけれどもそれより厄介なのは、恋だの愛だのそんなものを超えてしまったこの土方への想いなのだろうけど、そう思うと沖田は苦笑しかできなかった。


沖田はほんの僅かにさえも表情を変えずに山崎に一言悪いねィと言った。答えが分かっていたのか山崎は少し切なそうに眉を寄せさせてはいと素直に一言言っただけだ。
その山崎の様子にこの告白の意味は何だったのかと考える。自分の想いを発散させたかっただけなのだろうと考えついた沖田は全く迷惑なものだと少し冷めたように思いその場を離れようとしたのだけれども。

「やっぱり…副長が好きなんですか…」
「土方さん?」

不意に想い人の名を口に出されて沖田は歩みを止めた。チラと山崎を横目で見ると口に出した事を後悔しているのだろうか、しまったという顔をしていた。しかし言ってしまったものはしょうがないとでも思ったのだろう、顔を真剣なものに摩り替えて、口を開く。

「ふ、二人とも…すごく愛し合ってるみたいで…」
「愛?」

戸惑いつつ言う山崎の口から出た言葉につい馬鹿したように鼻で笑ってしまった。本当に真剣だったのだろう、山崎が軽く睨むように自分を見てきた。それを沖田は軽く視線を逸らす事で流す。

「そんなに儚いもので俺と土方さんの関係を現して欲しくねぇなァ」

ポツリと零した言葉は珍しく本音で。ついぽろぽろと言葉が出ていってしまった。

「俺と土方さんを結んでいるモンは愛だとか情だとかそんな綺麗なものじゃねぇ脆いもんじゃねぇ不安定なものじゃねぇ」
「もっと図太くてどろどろとした汚いモンがいっぱい混じってる」
「でも愛なんかよりよっぽど強く結びつけられてるんでィ」

喋り続けた沖田はそこで一度言葉を切って、ふ、と息を吐いた。その瞳は山崎を見据えていたけれども山崎はその瞳の先に本当は何が見えているのか、沖田の綺麗な空色の瞳に今映っているのは確かに自分だけれども本当は何を見ているのか、悟ってしまった。それが分かる自分は別に特別なのではない、誰が見たって分かる、だって、だってあんまりにもその瞳には色々な感情が含まれているのが見て取れて分かって沖田が感情をいくつも持つ相手なんてこれ以上ないほど限られている。山崎は思う。

「時々、自分ですらそんな感情持ってる事にぞっとする事があるけどねィ」

けれどもまるでその感情を捨ててしまいたいようにそう言った沖田に今とても熱烈な告白を聞いた後だというのに山崎には沖田が土方の事をどう思っているのかよく分からなくなった。

「……副長の事、そんなに好きじゃないんですか」
「好き嫌いで分けれるような、そんなもんじゃねぇんでさァ」

沖田は苦笑する。自分でさえどう思っているのか分からないのだ。どんな風に表現したら分からないこの想いを先ほどの言葉だけで山崎に分かってもらおうとは思っていなかったがあんまりにも見当違いの事を言われてそうとられてしまうのかと沖田は興味深げに思う。

「あるのは誰にも見せたくない渡したくないと言う醜い独占欲とそれ故に暴走する愚かな劣情、だけ」
「感情や欲望ばっかが先走ってどうもいけねぇや」

言ってから沖田はくしゃと髪をかいた。
喋りすぎた。ほんの少しだけ後悔をした後しかしまぁいいかと思う。山崎は誰に言う訳でもないだろうし自分の内に溜め込んでいると感情がぐちゃぐちゃになって上手く整理できない。今口に出して改めて自分のこの名称を付け辛い想いを確かめることができた。
真意を一つも言わず真実を上手く包み隠し喋られた山崎の事を考えると悪かったかとも思うけれども告白してきたそっちが悪い、沖田は思う。

「俺なんか好きになっても、良い事なんてねぇよ」

やっと沖田は山崎の失恋の痛手を和らげてやれるような事を言った。そんな事言ってやる気はなかったけれどもあんまりにも自分の事を喋りすぎたそのお詫びに。
じゃあな、言って今度こそ山崎の横を通り部屋を出て行く。すれ違った瞬間、確かに感じた山崎の激しい自分への想いを無視して。


END

一応リクエストの山崎が絡む土沖…アレ?なんかはずした?(うん) 

 雨にれても 051025