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ばたばたばたと聞きなれた足音が近づいてくるのが聞こえてきて沖田はまただと心の中で思った。そしてふとんを少し引っ張ると自分をその中に全部入れる。この前は一週間ほど前だったか。全く本当に繰り替え率の良い男だと沖田は大人びたように思う。 「(調子が良すぎでさァ…)」 女がいる時は自分を邪険に扱うくせに。ふとんにくるまり沖田はほんの少し怒りながら思った。けれどいつもそう思うのだけれども沖田には土方を拒む事はできない。利用されているだけだということは分かっているのだけれどもつい受け入れてしまう。 人を好きになるって、恐ろしく自分に損な事が多いことだと沖田は思った。片思いなら、なおさら。 「そうご…」 ぱし、と障子が開いたのをふとんの中で聞きながら沖田はぎゅ、と身を縮めさせた。 今にも泣きそうに(大の男が情けない)眉を寄せている土方を見ると自分の怒りや傷ついた心なんてどうでも良くなってしまうのを沖田は知っていてだから見ないように布団を被っていたのに。自分の名前を呼ぶ声だけで沖田の心が動くのには十分だった。幼心にも土方を慰めてやろうなんて思いが浮かんでくるのだ。フった女を本当に馬鹿でィと思うついでに感謝もしていた。 無言で沖田は布団から顔を出すと小さな手でこいこいと招いてやる。そうするとすぐにどすどすと音を立てて土方は来て布団を引っつかんでその中に入りギュウと沖田を抱き締めてきた。沖田は少し苦しくて顔を顰めるが何も言わない。ただ甘ったるい香のかおりが鼻を掠めて土方と女が抱き締めあっているところをリアルに思い浮かべてしまった。 胸が、痛い。 「マヨネーズ、おいしいだろ?なぁ、総悟ォ」 「…うん、美味いでさァ」 普通に食べ物に少量つけて食べるならな!心の中でそう付け足す。そしてまたマヨネーズを馬鹿みたいに何かにぶっかけて嫌われたのだろうと思い土方の事を哀れに思った。折角こんなに顔が良いのに異様なまでのマヨネーズ愛のせいで土方はよく女にフラれる。その度に沖田の部屋に来ては沖田と一緒に寝るのだ。その時は馬鹿みたいに潮らしくて沖田のほんの少ししか存在しない庇護欲が煽られるのだけれども次の日の朝には何事もなかったかのように土方はまたえらぶる。 土方は自分が女にフラれたから沖田の部屋に来ているなんてこと沖田が気付いているとは知らないらしいのだ。沖田は別に言うつもりもなかった。土方のプライドをへし折ってみたいという気もあったけれどもそれよりこの土方と一緒に寝れる時間を沖田は好きだった。 土方はいつもは自分よりずっと上の立場の大人の男で身長差のせいもあってか沖田にはとても大きく見えて隙なんてどこを探しても絶対にないのだけれどもこの時だけは自分が上に立って土方を可哀想と思えれる。 けれどもいや、と、沖田は思った。 「(かわいそうに思うなんてうそだ…)」 本当は喜んでいた。神は二物を与えずなんて嘘だと、だってだったらこの目の前の男はどうなるんだと、ずっと思っていたけれども。2つなんてもんじゃなくていくつもいくつも神は土方に才能を与えていたけれども、だけど大きな欠点も1つ与えてくれて沖田は神とやらにとても感謝していた。 土方が悲しんでいるのに喜んでいる自分がとてもきたなくて、いやなやつに思えたけれどでも土方が女にフラれて傷ついて自分の部屋に来て布団にもぐりこんでくる度に自分も同じように傷ついてんだから良いじゃないかとも思った。土方をこれ以上なく近くに感じれるこの時間は沖田にとって好きな時間でもあったけれども逆に来る度に女にフラれていると言う事はそれだけの女と付き合っているということで嫌でも土方のモテ具合を思い知らされる辛い時間でもあるのだ。また、もう何度も何度も一緒に寝ているのに、少し欲をふくんで足を絡めたりなんてこともしているのに、襲ってこない土方に自分なんて眼中にない事も、思い知らされる。 それに土方は本当に良い男だから、きっとマヨネーズ狂なところもひっくるめて愛してあげれる女がいつか絶対現れる。そしたら俺の役目も終わり。だからそれまでは絶対にこの人を離す事なんてしてやらねぇ。強く思って沖田は土方にひっついた。 END |
| 小さい子って、何にも考えてないように見えて実は色々考えてるんですよね みたいな… ポラリス 051029 |