あんまりにも部屋に入る時はノックをしてから入れって毎日何度も何度も言われていたからか、副長室の前でふとその言葉を思い出した沖田はちょっとノックをしてみた。けれども返事がなくて、沖田はもう一度ノックをしてみる。今度は少し強めに。しかしやはり返事はない。折角言う事聞いてやったのに、沖田はやってらんね、思ってドアを開ける。

「(あ…)」

不機嫌になっていた沖田はけれどもドアが開いて、目に飛び込んできたものに瞳を見開いた。
土方が、机の上で寝ていたのだ。沖田は急いでドアを閉めた。誰にも見られなかったかな、思ってる自分に気付いて沖田は髪をくしゃりとかきあげる。そしてまたチラと土方の方を見てみた。ドアを大分乱暴に閉めてしまって大きな音がたったから起きてしまったかと思ったのだけれどもまだ寝ていた。沖田は安心して小さく息を吐く。

「めっずらしーな…」

そして呟きながら土方の方に近寄っていった。

「ふぅん…」

じろじろと土方の寝顔を眺めながら沖田はそういえば土方の寝顔なんて、あんまり見た事なかったと思う。やっぱ綺麗な顔してんじゃんなんて思ってしまってむかついた。そ、と土方の方へ手を伸ばす。指先で土方の頬に触れて、それからその滑らかな頬をぎゅ、と、つねってやった。

「いっでェ!」
「あ、…おきちゃった」

そんなに強くつねったわけではなかったのだけれども土方は眠りから覚めてしまって沖田は少し残念に思う。それでもつねっている手を離さないでいるといつまでつねってんだとその手を叩き落された。

「おきちゃった、じゃねぇえんだよ!!お前どんだけ力入れてんの!起きるに決まってんだろ!」
「えぇー」

やはり沖田はそんなに力を入れたつもりはないと思ったのだけれども土方の頬には真っ赤な痕が濃くついていてそれを見てやっと強くつまんでいたのだと沖田は知る。沖田は自分の手を見てみた。

「お前は手加減を知らないから困るよ」

はぁ、と大袈裟に溜息を吐きながら言われる。しかし沖田はまだ自分の手を見ていてオイ聞いてんのかよ、言われて土方に頬をつねられた。

「ひだっ、ひだいひだい!!」

それがあんまりにも痛くって、沖田は大きな声を上げる。土方は最後に一際強くひっぱってから離してくれた。ひりひり痛む頬をおさえながら土方を睨む。土方は満足気に笑っていた。

「俺こんな強くつねってねぇですぜ!手加減知んねぇのどっちでィ!!」

沖田は抗議するように言ったのだけれど土方はもう聞いていなかった。ふわぁ、と小さく欠伸しながら伸びをして、それから早々と寝る前にやっていたのだろう机の上に置いてある書類とにらめっこし始めた。
沖田はもう一度土方の頬を、今度はさきほどより強くつねってやりたくなった。


END

 

  ねる 051105