ほんの少し上目遣いに自分を見やって土方さぁん、甘えた声を出しながら近づいてくる時の沖田が何を目的としているのか土方はよく知っていた。その仕草と声色は昔から変わらないと言うのに何度それをされても土方は慣れるということをしなかった。それをされるのがあまり頻繁ではないからか土方はいちいちどきどきしてしまってまるで恋をしったばかりの幼い少年のようだと思う。
沖田がそのような甘えを含んだ態度をみせる時はものすごい悪いことをしたときで少しのことでは全く悪びれない沖田だけにその時の沖田の口から出される「悪いこと」は笑えないようなことが多い。それでも土方はその時を数少ない楽しみにしていた。

沖田は土方の傍まで近づくと縁側に座っている土方の横に腰をかける。そうして少しの間足をぶらぶらとさせて、けれども不意に土方の顔をのぞきこむと言いにくそうに、唇を開かせた。

「こわしちゃいやした」
「……何を」

主語がぽっかり抜けているのはもちろんわざとで沖田はそれを指摘されて視線を逸らす。土方は内心では肩を抱き寄せて唇をかすめとってこのままふにゃららしたいなんてやましいことを思いながら声と顔だけは怖く作っていた。それに余裕がないのかまんまと騙されている沖田は少し怯えたように土方を見ている。言葉を紡ぐ唇は僅かに震えていた。

「ひじかたさんの、」
「…」
「よびの、」
「…」
「…」
「……」
「……、かた、」
「……」
「……」
「……」
「……」
「…総悟」
「…」
「…」
「……」
「……」
「……刀、っってェエ!!」

言った瞬間ゴンッと頭に拳骨が勢いよくあてられた。激痛に沖田は叫び声をあげる。反射的に頭をおさえて瘤ができてんじゃないのかとそこを擦った。

「ちょっ、いってェな!!ひっでェや土方さん…、俺のことかわいくねぇの!?」
「なぁあにがかわいくねぇの!?だ!ほんっとテメェはこんな時だけ可愛くなりやがって…もう一発殴らせろ!!」
「やだっ、」

言いながら沖田はギュっと土方の腰に抱きつく。そして甘えるようにそこに頭をすりつけた。そうしてからまた土方と瞳を合わせる。少し眉を寄せて悪そうな顔をしている沖田は土方の怒りを半減させるのには十分だった。

「ひじかたさん、悪かったと思ってまさァ。…すいやせん」

しゅん、と項垂れる様子は土方の弱いところをピンポイントで突いてきた。えぇオイオイ許しちゃうの?許しちゃうのかよ、自分に問う。予備の刀っていったってそこそこ値もはったし結構気に入っていて手入れをかかした事なかったしそれに何よりまだ実践で使ったことなかったのに、どのくらい壊されたのかは知らないけれどもっと怒ったっていいんじゃないのか。思うのだけれども怒りが冷めたらもうそれはどうしようもない。それより手加減なしで殴ってしまって瘤ができてる頭を撫でてやりたくてしょうがなくなってしまったのだから、しょうがない。
あと一発くらい殴っておきたかったのだけれども殴ろうと振り上げた腕は腰にまとわりつく沖田の肩を抱き締めていた。


END

沖田は無意識でやっているといい
それより私は大きな声で土方にばーかといってやりたいです(甘すぎなんだよォオ) 

  まい 051109