沖田はほんの僅かにさえ表情を変えずに話し合いを終えた。

土方は、内心とてもイラついていてしょうがなかった。先方は沖田の事を気に入っているらしくって、沖田のことをとても褒めて下さっていて、愛想笑いの1つや2つしてそんなとんでもないですなんて謙遜をしてそれから相手を逆に褒めて、…そんな世渡り術くらいもう何年も幕臣やってんだから身に付けていておかしくないはずなのに。土方は頭を痛めながら思った。
沖田は始終ほんの僅かにさえ表情を変えずにただはぁ、はぁ、とどう贔屓目に見てもやる気のない返事しか返さずにいた。大分、感じが悪い。土方はフォローを入れつつ小さな声で沖田にもっと気の良い返事をするよう促したのだけれども沖田は結局何の反応も返さなかった。



「お前ってさ、もう少し愛想よくできないのか?」
「…」

土方はブチ切れそうになるのを抑えて遠慮していた煙草を懐から取り出すとそれに火をつけながら言った。沖田は土方の方を見るでもなくボケッと床を眺めているだけだ。そのあんまりにもなげやりな沖田の態度に土方も我慢の限界を越した。

「おい総悟!聞いてんのかよ」
「…」

怒鳴るがそれでも沖田はなんの反応も示さなくてチッと舌打ちをする。イライラしてしまって土方は髪をガシガシとかいて何とか自分を落ち着かせようとした。むかついてもしょうがない。沖田は自分がむかついたって何も構いはしないのだから。損をするのは自分だけだ。すぱすぱと煙草を吸って苛立ちを紛らわす。その間中もやはり沖田は無表情に下を見ているだけだった。

「っとに、お前はどんだけその麗しいお顔で得してっと思ってんだ一度顔をとりかえて見ろ人生変わるぞ」
「…」

そういう自分もその麗しい顔のせいで沖田に得をさせている人物の1人なのだけれどもと土方は思い言ったことを後悔した。沖田に1番甘いのは自分だという自覚が土方にはあるからだ。沖田がこんな顔をしていなければ絶対今頃整形のきかない顔になっていると土方は思う。沖田の行動は何度土方の逆鱗に触れたか知れやしない。

「そーうーごーー!!てめ、返事もできねぇってかコラ!」
「…はぁ」

沖田は一応、事の成り行きを全部聞いていて向こうが自分を気に入ってくれてることもだからといってそれに甘んじて仏頂面してるのがよくないことも土方が隣でどれだけ自分の態度にはらはらしていたかも、知っていた。ほんの僅かにだけ土方に悪いと思ってけれど自分がこんな風になってしまった原因の8割くらいは土方にあるのだから少しくらい被害をこうむったってそれは仕方ないことだと沖田は考える。

憎んで欲しいと、沖田は思っていた。好かれるくらいならいっそ嫌いになって欲しい。だって面倒なんだもの、沖田は誰に言うでもなく心の中で思っていた。
愛だとか情だとかそしてそれについてくる優しさだとか甘さだとか贔屓だとか、そういうものが沖田には鬱陶しくて、煩わしくて、たまらなかった。
沖田は昔から周りに好かれて、甘やかされて、大事にされて育ってきたものだからもうそれに飽きてしまったのだ。そういうものばかり押し付けられるとつまらなくてしょうがなかった。

「(ぶち壊したい…)」

いろいろと。
そんなことばかり考えているものだから土方の話が頭に入ってこなくてあとで叩かれることになるのだけれどもやはり叩く手に力がこもっていないから沖田のそれは改善されない。おい総悟!聞いてんのかっての、コラ!言いながらパシッと頭を叩かれたけど全然痛くなくて沖田はハッと嘲笑する。そうするとまた叩かれてけれどもやっぱり全然痛くなくて沖田は思った。

「(やっぱり9割くらいこいつのせいだ)」


END

 

  お望みは? 051119